Vlad Tepes:「War Funeral March」


フレンチカルト・ブラックメタル・ゴッドVlad Tepesの、95年デモ「War Funeral March」に93年デモ「Rehearsal Winter'93」を追加したブート音源。
MutiilationBelketreらとともにBlack Legions(Les Legions Noires)の中核をなしていたバンド。数多くのデモ音源を出しつつ、そのどれもが少数リリースなため世に出回っている音源はブートばかりというカルト中のカルトバンド。90年代フレンチブラックの代表格ですね。


まず聞いて衝撃を受けたのが「曲がちゃんと聞こえる!!」ということ(笑)いや、先に入手していたLa Morte Lunaデモは、そりゃもうひどいベコベコ音質で初めはたまげたもんだwしかし耳が肥えた今となってはあれも守備範囲内(むしろウェルカム)なわけだがw
今作もデモだけあって当然劣悪なボロボロ音質なわけですが、むしろラフでかっこいいです。


曲の方はというと、Darkthrone初期Carpathian ForestのようないわゆるCeltic Frostスタイルの楽曲に、フランスらしい暗黒オーラをまとったリフとメロウなトレモロが絡むといった音像。低音がブリブリしたブーミーなギター、不安を煽るようなリフワークを伴って適度に疾走する様は非常にカッコ気持ちいいです。


特に95年作の方は、一音目から強烈に不穏な波動を撒き散らす、まさにフレンチ・プリミティブの原型たる音楽性。ジリジリしたギターで掻き鳴らされるメロディは珠玉の出来。ハッとするほどキャッチ―なメロウナンバー#3なんかMutiilation好きには堪らないはず。他にも、いかにもフランス・仄かにノルウェー#1、スラッシーでノリノリな#2、怪しげでプリプリした#4#5と一切駄曲がないです。


ヴォーカルは低めの川島さん(Sighのような掠れ気味のガナリ声。低音ガナリはフレンチ・ブラックの基本ですね。邪悪度◎。時折聞こえるブラッキーな高音泣き喚きのコーラスもクール。


#6〜#9は93年の音源。やはりオフィシャルで一番最初の音源というだけあって音質は籠り気味。最初のうちは右と左のバランスが非常に悪く、片方が大きくなったかと思えば音が飛んだりして、ヘッドホンで聴いていると気持ち悪くなるかも。まぁ後半はまともになるしUGマニアなら聞けないってこたないでしょ(笑)
曲は、フランスよりは初期ノルウェーチック。Burzumっぽさなんかも感じられ(#7#8で顕著)、非常に荒削りな印象。しかし#9など、独特のメロディセンスはすでに開花しています。
ドンタンドンタン単調なリズムと、ひたすらにガナるヴォーカル、くぐもった音質にRawな演奏と、黎明期のブラックメタルの持つ言いようのない狂気・気迫が感じられて、これがホント不思議なほどかっこいい


おそらく一般メタラーにとってはゴミ屑みたいな音源だろうし、ミーハーなにわかブラックメタラーにもこの良さはわからないだろう。
一般的な価値観ではとらえきれない、しかし圧倒的なまでに魂を揺さぶる「何か」。
本当にブラックメタルが好きな人にしかわからない、そういったブラックメタル「らしさ」がギュッと濃縮されています。
これぞまさしく真性ブラックメタル。まじで魂持ってかれました。
ただ単に初期だから名盤、というだけではすまされない一枚。


・fan Vlad Tepes myspace pageMarch to the Black Holocaust激しく所望。