AGALLOCH : 「Ashes Against the Grain」

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アメリカはオレゴン州の【自然崇拝】メランコリック・フォーク・プログレッシブ/ダークメタル。2006年の3rdアルバム。


自然への畏怖と敬意を強く表明した美メロ・ヒーゼン・ブラックと、 Opeth 系の非北欧フォークを取り入れたプログレメロデスを足して2で割った様な音楽性。 Amon Amarth に似てるような気がしないでもない。そう感じるのは俺だけかな?どこがと言われるとちょっと説明できないけど、ただなんとなく。


アコギやピアノ、朗々としたクリーンボイスなどをふんだんに取り入れゆっくりと紡がれるその叙情的世界観は唯一無二であり、静と動、メランコリズムとダイナミズムがフレキシブルに交錯する、浮遊感溢れる音空間を形成しています。


緑豊かな自然とゆーよりは木が枯れ落葉した秋、モノトーンの冬といった印象。それもブラックメタルのような吹き荒れる吹雪とかではなく、一面銀世界、決して人が踏み入ることのない静かな森といった雰囲気。
淡々と寂しさを吐き出しているかと思えば、孤独と静寂のなかにも激しい情動が垣間見える瞬間がたまらなく涙を誘います


自己完結した一つのシステムとしての自然、生命としての原点であるその摂理から外れた営みを続ける人間が懐古的憧憬を持って自然を見つめる、その視線を音楽にしたらきっとこんな感じ。
鬱々と沈み込む、とゆーのとはまたちょっとニュアンスが違った類の内省的なベクトル。聴いていると自己の精神世界にトリップすると同時に、肉体から解き放たれた自我が自己を取り巻く大きな流れに同調し飽和していくような不思議な感覚を覚えます。
良識ある一大学生にこんな厨二病的恥ずかし評論をさせてしまうくらいに精神的・哲学的な主張を感じさせる芸術メタルですwww


受け取る「印象」でなく「音」はとゆーと、いわゆる典型的なメタルに求められるものは多分期待出来ません
全編アコースティック、クリアな音作りで、ディストーションサウンドもあるにはありますがそこにスポットライトが当たることはまずありません。
ボーカルは朗々としたクリーンボイスに重きが置かれ、そこに悲壮感漂う嘆きブラックボイスが重なるという感じ。しかしボーカルが入ってない時間の方が長く、入っていてもそれはボーカルというより演奏陣同様世界を形づくる一つの“楽器”として用いられているので、どちらかとゆーとインストアルバムのような雰囲気。
また、終始ミドルテンポで、疾走する展開はほぼ皆無、加えて一曲一曲が長く、曲どうしも似通っているため、ひどく冗長で退屈に感じる人もいるかも。ただ、決してダラダラしてるわけじゃないし、アルバム中に漂うメランコリック具合はただならぬ様相を呈しているので、聞く人によって単調ともドラマチックともなりそーです。


ベストチューンは#2“ Falling Snow ”Agalloch の魅力はこの一曲に集約されているといっても過言ではないです。一番「走ってる」曲ってのもポイント高しwwタイトルがこんなにしっくりくる曲もそーないのでは。クサイのとはまた別な、ホロリと涙が落ちるような「泣き」があります。


いや、しかしホント素晴らしいよ。メタルの域を越えて純粋に感動できるものに触れたって感じ。
飲めや歌えやの Korpiklaani とはまた違ったアプローチの環境配慮エコメタル。違うか。そーゆー陳腐な(コルピが陳腐って意味じゃないよw)環境保護団体みたいなのでなく、もっと本質的・根本的な部分に対する、ある意味悲観的な、人間という存在への問題提起
まぁそんな音楽に関係ない観念論はどうでもいいとして(笑)多くの人に触れて欲しいアルバムですね。アメリカのバンドとは信じられませんなw