Osculum Infame:[Dor-nu-Fauglith]


フランス産ブラックメタル、1997年1st。9曲58分強。
ブラックメタル・ファンジン[End of a Journey]第一弾でも紹介されていた、知る人ぞ知る一作。
UKのMordgrimmよりCDとDLPでリリースされた後、長らく廃盤の状況が続きレア盤扱いされていた作品だが、この度ポルトガルSignal Rexがテープとしての再発を決行した。


UGブラックのラフさや寒々しさはそのままに、時に爽やかで明るいとすら感じられるほどの極上哀愁トレモロと、90年代UGブラック特有の荘厳チープなアトモスフィアをB級ダーク・ファンタジー感マシマシにしたような壮麗シンフォニック・シンセを伴ってツタツタドカドカと軽快に疾駆する悶殺・鬼メロウなプリミティブ・ブラックメタル!!
おひょひょひょひょーーーー!!
こいつはたまらん!!!
とにもかくにもやたら滅法メロディック
Kristallnacht/Desolation Triumphalis/Chemin de HaineMalkiraBekhira/Arkhon InfaustusD. Deviantが参加しているということで、KristallnachtBekhiraあるいはSeigneur Volandに類する寒々しいメロウさと軽快な疾走感を武器にした非LLN系フレンチ・プリミティブながら、マーチチックなイントロ#1[A Prelude to Dor-nu-Fauglith]から続く#2[Under the Sign of the Beast]冒頭のアコギパート、アコギとドラムによる勇ましく力強いインスト曲#5[When Iron Has Been Blended with Blood]、ファ〜ファ〜シンセとキメ細かくメロディックなベースが素敵な#6[The Nine Ghosts of the Ring of Power]などに顕著なように、ペイガン/ヴァイキング系を思わせる悲壮感を孕んだ勇壮さを感じさせるあたりがツボを突く。
このあたりの感覚はブルガリアAryan ArtBagaturにも通じ、チラリと初期Nokturnal Mortumを彷彿とさせたりもする。
どこを切り取ってもメロディック極まりないのに、鼻に付く「甘ったるさ」を一切感じさせずブラックメタルらしい緊張感やシリアスな響き、厭世的な孤高感を維持しているという絶妙な塩梅が素晴らしいことこの上ない!
また音質はと言えば、ジリジリモサモサのチープなギターと生々しく軽めなドラムはいかにもUGな耳障りであるものの、音の分離はスッキリとしていてこの手の音源としては寧ろ聴きやすい部類と言える。


というわけで、なるほどフレンチBMの名盤と称賛されるのも頷かざるを得ない大変素晴らしい作品。
ロディックなプリミティブが好きな人には広く遍くオススメ、特に前述したようなバンドが好みであれば問答無用で楽しめるだろう。
自分はそれほどちゃんと歴史的名盤を万遍なく聴き尽くしているわけではないので、本作を聴いてやっぱりブラックメタルの黄金時代は90年代なんだなぁと改めて感じさせられた次第。
さらに言えば2011年にファンジン主催者の緒方さんに勧められてから、欲しい欲しいと思いつつオクなんかでは軒並み高額(今現在Discogsの最安値は$84.29)ゆえずっと入手出来ていなかった音源なので、レーベルからのニュースレターをもらった瞬間飛び上るほど喜び勇んでオーダーし、やっとこ入手出来たという経験もまた、「流通の悪い憧れのレア音源を入手する」という、ブラックメタルの泥沼にハマる要因ともなった原初の興奮を久しぶりに味わえたこともあり、色々な意味でお気に入りの音源となった。
実は今回の再発を受けて「みんなー!レアな名盤が再発されたよー!急げー!」という記事にしようと画策していたのだが、記事を書いてリンク張る段階でレーベル見たら既にソールドアウト・・・まじか・・・
限定数は書いてなかったんだけどなぁ。
レーベルでは売り切れとなってしまったが、これからディストロに並んだりする確率も微レ存というほど低くはない(はず・・・)と思うので、気になる方はアンテナ張り巡らして是非ともゲットして欲しい。


【お気に入り】
#3[Vampiric Warmaster (Part II)]:いかにもSatanic Warmasterが使いそうなタイトル(笑)いやいや、これは名曲だ!
Facebook
https://www.facebook.com/pages/Osculum-Infame/259674950723493
【レーベルサイト】
http://thevaultshop.bigcartel.com/


ちなみに、オリジナルと比べるとジャケットの中心にいる3頭の狼がさりげなく居なくなっている。
またオリジナルでは#7だった[Kein entkommen]#9になっている。