Saor (ex-Àrsaidh):[Roots]


UK産自然派アトモスフェリック・フォーク・ブラックメタル、2013年1st。4曲50分。
ドイツのNS/ペイガン系有力レーベルDarker than Black Recordsよりリリース。
ちなみに本作リリース時は「Àrsaidh」という名前で活動していたが、「多くの人がなんて読むかわかってくれないし、“À”をデジタル入力するのが面倒だから」という、妙に間抜けというかなんというかな理由で現在は「Saor」と改名している(笑)


【止まらないメランコリーと荘厳美麗なドラマティズム!フォークガン推し自然派アトモスフェリック・ブラックの風雲児襲来!】


空間的なギターとシンセによる、冷たさと温かさ、柔らかな癒しと心を抉るメランコリーとが同居したアトモスフェリックなスタイルであり、AgallochWolves in the Throne Roomの世界観に属する新世代系フォーク・ブラック。
とりわけ哀愁や郷愁といったノスタルジックなセンスが強く、孤高感と寂寥感を募らせるシリアスな雰囲気だが、同時にオーガニックな温かみも感じさせる柔らかく神秘的・自然的な空気感に満ちており、いわゆるカスカディア系に通ずる音楽性だ。
その琴線を刺激して止まない凛々しげだが哀愁に満ちたトレモロのメロディも素晴らしいことこの上ないが、特筆すべきはその多彩なサウンド
ロマンティックな昂揚感のあるギターソロや焚火in森林系アコギは勿論のこと、ヴァイオリン、パイプ、笛、ピアノといったアコースティック楽器が全編に亘ってフォーキーなフレーズを絡めてくるのが特徴的であり、凛として神々しくすらある荘厳美麗の神秘的ブラックメタルの上で、素朴・純朴だが心の深い所に力強く哀愁を訴えかける民族的なメロディが狂おしく乱舞するこのサウンドを目の当たりにした時の感動は筆舌に尽くしがたいものがある。
フォーキーなフレーズを直截的に採り入れたカスカディアン・ブラックというとPanopticonKentuckyや、あるいはアコギ・フィーチャーというとPetrychorが思い浮かぶが、このSaorも彼らの方法論に近く、民族的なサウンドを新世代系アトモスフェリック・ブラックに溶け込ませることに成功しており、独自のサウンドを構成するに至っているのが素晴らしい。
また15分前後の長尺曲の中で山谷をしっかりと儲けてドラマを構築するインテリジェンスも備えており、楽曲の完成度に関しても非の打ちどころがない。
どの曲もクライマックスの盛り上がり方が尋常じゃないのだ!


というわけで、近年注目を浴びる自然崇拝ブラックの中でも特にフォークの取り入れ方がお見事天晴れ!な快作。
ブラックメタル的な要素だけ抜き取っても素晴らしいのに、そこプラスアルファでフォーク要素を憎いほど効果的に使ってくるんだからもうたまったもんじゃない!
AgallochOctober FallsOak PantheonGallowbraid等の新世代系アトモスフェリック・フォーク・ブラックや、WITTR初期SkagosFalls of RaurosDeafestといったカスカディア勢が好みであれば気に入ること間違い無し!
これはチェックしないわけにはいきませんぜ旦那!


【お気に入り】
#2[Carved in Stone]:完全無欠。素晴らしいにも程がある!
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【Bandcamp】
http://saor.bandcamp.com/