Sleeping Peonies:[Rose Curl, Sea Swirl]


やたらチンコチンコ言われるUK産、日本のtommy heavenly6が好きらしいロキノンなイケメンによる独りポストディプレッシブ・ブラックメタルアンビエントシューゲイザー、2010年1st-EP。7曲26分半。
Khrysanthoneyより100枚限定でリリース。


【鈍く響く反響と残響の濃霧の中で、繊細で美しくも虚無感と悲愴感で一杯の儚げメロディが幽玄に浮遊する幻想ブラックゲイズ/ゴーストゲイズ!】


先日紹介した2nd-EPと同様の、虚無感と悲愴感に満ちた心臓破り系シューゲイジング・ブラック。
鈍重な圧殺系ベース/神秘的なアンビエンスに満ちたシンセサイザーがボォボォボワンボワンと反響することでヒビ割れたノイズ空間を構築し、そこに軽い打ち込みドラムが静寂スローテンポと抑えきれない悲しみが奔出するようなブラストの2軸でドラマチックな感情の起伏を演出し、ノイズの雲間に消え入りそうなほど繊細で儚げなクリーンギター/ザラっとした質感で切り込んでくるディストーションギター/キリキリと鋭利に心を掻き毟る高音ギターが、ほんのりと明るさや爽やかさを滲ませつつも胸が張り裂けんばかりに儚く切ない痛烈高音トレモロ、幻想的アルペジオを奏でる。
さらに淡く浮遊するシンセ、ポロロンポロンと流麗な音色のピアノ・エレクトロニカが、寂寥感を募らせるような哀しく美しい旋律をリリカルに奏でる。
ヴォーカルは痛々しいほどに泣き叫ぶ鬱系絶叫。ガナルというよりは、ただただどうしようもない悲哀の感情をぶちまけるように悲痛な叫び声を張り上げており、楽曲の哀しみに満ちた雰囲気を殊更に強調している。


やはり残響が響き渡る幻想的・神秘的なアトモスフィアと、儚く切ない涙腺決壊メロディは絶品であり、終始悶絶しっぱなし。
重々しいノイズに押しつぶされそうな息苦しさの中を、精一杯の凛々しさを湛えて、微かな明るさが滲むからこそより切なさを増す哀しくも美しいメロディが切り込んでくる様には涙を禁じ得ず、胸がキュンキュンして思わず溜め息が漏れてしまう。


このSleeping Peoniesはシューゲブラックの中でもとりわけヘヴィメタル的なエッセンスが希薄であり、アンビエントにより近づいたスタイルが持ち味であるが、本作は2ndに比してブラックメタル的な疾走パートが楽曲の中に占める割合が多く、ギリギリのところでブラックメタルの骨格を維持している。
さらに本作の方が儚げな哀愁や悲愴感が強調されており、またメロディ自体がよりキャッチーである(ベース含め)ようにも感じられ、ガツンとくるインパクトや殺傷力はこちらの方に軍配が上がるのではないかと思う。
フワフワ漂うようなアンビエントパートと昂ぶる感情を抑えきれないようなブラストパートの対比もより鮮明となっており、結果として、ギター・ベース・シンセサイザーの圧倒的なノイズが構築する夢幻的音空間と、そのなかで叙情を切なげに紡ぎながら疾駆するシューゲイザーブラックメタルの融合が見事なまでに実現されている。


というわけで、Neige御大以降のシューゲイザーブラックムーブメントの中でも突出した光を放っている感無量級の傑作EP
ブラックメタルでもシューゲイザーでもない、まさにブラックゲイズと呼ぶにふさわしき21世紀型ブラックメタルが提示されており、アルバムを聴いている間はまるで別世界を漂っているかのような夢心地に浸ることが出来る。
いまや多くのNeigeフォロワーがおり、メロディの秀逸なバンドは数多く見受けられるが、エレクトロニカの導入をはじめとして、Alcest・Amesoeursをなぞるのではなくそもそもの音像・スタイルの部分でオリジナリティを発揮しているバンドというのはなかなかに貴重であるように感じる。
6曲27分とコンパクトにまとまっており、かつ各楽曲の内容が非常に充実している点も高評価だ。
ここまでアンビエントな要素を取り込みながら単調さは全くなく、むしろドラマチックであるとすら言えるので、アンビエント系が苦手でも結構イケるのではないかと思う。
この1st2ndか、どちらの方がハマるかは個人の趣味嗜好によるところだと思うが、僕個人としてはより感情的で疾走度も高いこちらの作品の方がより心に響いた次第。
とはいえどちらも非常に素晴らしい作品なので、2ndが好きなら本作へ、そして本作が好きなら2ndへ迷わず凸るべき。
AlcestPest Pro.白コンピMoroseOnryoBook of Sandあたりが好きな誇り高きヒップスターブラックメタラーの方にはぜひ聴いていただきたい一枚。
なのだが、本作は100枚と極少リリースであり、2ndのようにデジタルアルバムも配布されていないため入手難度高めとなっている。
もし遭遇された方はその幸運を神、もしくはNeige御大に感謝して見逃すことなくゲットすることを強く勧めます。
激おすすめ!


【お気に入り】
#2[Lighthouse Alight, Stars Aligned]:涙腺原子崩壊チューン。ああ儚げ疾走の心地良さよ。
【オフィシャルサイト】
http://sleepingpeonies.tumblr.com/
MySpace
http://www.myspace.com/sleepingpeonies
【Bandcamp】
http://sleepingpeonies.bandcamp.com/
次回作もきっと少ないだろうから、アンテナビンビコ張っておきたい。
ところで、Peonyとは牡丹のことであって、決して股間のメルヘンボックスの事ではないので、くれぐれも誤解無きようご注意願いたい。