V/A:[The Plague of Our Lands]


メキシコのディプレ系レーベル、Self Mutilation Servicesよりリリースされた、2009年シューゲイザーアンビエント/ディプレッシブブラックメタル3-wayスプリット
9曲58分強。500枚限定。
Dernier MartyrLifeless SorrowAll the Coldの3バンドが楽曲を提供している。
お察しの通りPest Productionsのシューゲコンピが素晴らしかったDernier Martyr目当てで買ったわけだが、残りの2バンドも予想を上回って素晴らしく、なかなか充実したスプ音源となっている。

Dernier Martyr→Myspace):#1〜#3

ロシア産、シューゲイザー/ポストディプレッシブブラックメタル。3曲12分強。
#1[Follow the River, Towards the Sea...]Pest Pro.のシューゲコンピにも収録されていた曲なので、新規収録は実質2曲。
AlcestAmesoeursMortiferaあたりの影響を強く伺わせるThis is Shoegaze Black Metalな音像。
ギャリギャリザラザラと強烈に歪められたディストーションギターが掻き鳴らす心臓破りの切なげトレモロと、ポロロンポロロンと柔らかく幻想的に響きわたるクリーンギターによる淡く優しげなトレモロとが絡み合い織りなす儚くも切ない癒しは絶品
ブラックメタル的疾走とポストロック的軽快疾走を巧みに織り交ぜながら明るく優しいディプレサウンドが繰り広げられている。
涙腺刺激の痛烈に胸に突き刺さるメロディの素晴らしさもさることながら、苦しげに、悲しげに喚き散らす壮絶泣きガナリヴォーカルも非常に生々しく、心に響くことこの上ない。スタイルとしてはいかにもディプレ系という感じだが、とにかく感情の込め方がハンパではなく、真に迫る悲痛な絶叫を聴かせてくれる。絶望よりも希望や光と言った色合いが強い楽曲と好対照をなしており、楽曲の持つ高い煽情性をさらに助長している。
Svarti Loghin[Empty World]をプリミティブ寄りにしたような雰囲気なので、そちらが好みであればこのバンドもツボにハマるだろう。とくに#3[Angels' Throats]Alcestを凌ぐ勢いのハートブレーキング癒しブラックの超名曲となっており、心が粉々に砕ける殺傷力。素晴らしすぎる。

Lifeless Sorrow→Myspace):#4〜#6

南アフリカ共和国(!)産、ディプレッシブ/ドゥームブラックメタル。3曲21分強。
フルレンスこそまだだが、精力的にデモ音源をリリースしているバンドのようだ。
もっさり籠ったジリジリチリチリハーシュギターがシューゲ系に通ずるディプレッシブでセンチメンタルな根暗トレモロMutiilationなどを思わせるヒステリックなぶっ壊れ陰鬱リフ重たく引きずるような圧殺系ドゥーミーリフを掻き鳴らし、Silencerを彷彿とさせる情けなさ漂う高音泣きガナリヴォーカルが苦しげに呻きネチっこく絶叫する
寂寥感や孤独感といったネガティブな感情が強調された楽曲をプレイしているが、その中に淡い希望が幽かに見え隠れするような情緒感がいかにも現代ディプレらしい
淡々とした疾走メインだが、リフレイン主体の長めの楽曲の中でストップ&ゴーを頻繁に繰り返しており、メタルパートの合間合間に挟まれる、淡々とリズムを刻む古時計じみた打ち込みドラムの上で寂しげに奏でられるピアノやアコギがいい感じに暗〜くジメっとした妖しげな雰囲気を演出している
また#5[Of Desolate Winds]では気味の悪いソロなども挿入されている。
このバンドもヴォーカルが素晴らしく、キチガイじみた薄気味の悪い泣きガナリが堪能できる。#6[Dissociative Twilight]では洞穴の奥底で唸っている獣のようなドゥーム系極低音グロウルも用いており、これも実にかっこ良い。
#4[Plague of our Land]は切なげディプレ寄り、#5・#6はドゥーム寄りの楽曲となっている。

All the Cold→Myspace):#7〜#9

ロシア産、ポストディプレッシブブラックメタル。3曲15分弱。
このバンドもシューゲ系に通ずる儚さ切なさを感じさせるメランコリックなリフ/トレモロを装備した現代ディプレではあるものの、メロデスよろしく泣きのソロ/明るいとさえ言えそうなロマンティックなソロインダストリアルなピコピコ/神秘的ファ〜ファ〜シンセが大フィーチャーされているあたりがかなり個性的。
スタイル的にもメロデス/ブラックといった様相であり、ジメジメした陰鬱感や孤独感はほとんど感じられず、前2バンドに比べるとかなり健全にメタルをやっている印象。憂鬱感や哀愁といったものを強調した暗めのメロデスに現代ディプレ的情緒感を添加したような作風だ
同レーベルからリリースされている1stを視聴した時には冷たいKeyが全編を覆うアンビエントブラックだったので、だいぶ様変わりしたようだ。
これはこれでメロディの主軸をなすリフやギターソロがなかなかに煽情的であり、またシンセもいい仕事をしており、全編通して聴いていて胸が苦しくなるような哀愁が味わえ泣ける
#9[Smile of the Grim]終盤のしっとりと奏でられるアコギやロックパートなどもソソる。
ヴォーカルはやはり前2バンド同様の苦しげなディプレ系高音泣き絶叫系。心に強く訴えかけてくる痛切なガナリ声が堪能できる。




というわけで、最近のシューゲ系や、それに準ずる儚いディプレ、明るいディプレが好きならば押さえておいて損はない良作。
個人的にDernier Martyrはシューゲ系内でも抜きんでて好きなバンドであり、このバンドの新規2曲が聴けただけでも大満足だ。
Pest Pro.コンピ同様素晴らしい2曲となっているので、あのコンピでこのバンドを気に入った人は購入を強く推奨します。
一方、Lifeless SorrwAll the Coldも今後要チェックだなという印象。
All the Cold1stはあまりピンとこなかったが、この作風ならフルレンス買ってもいいかも。
なんにせよ、500枚限定と数に限りがあるので、興味もたれた方は早いうちに購入されたし。


・Self Mutilation Services Myspace