Semen Datura:[Einsamkeit]


ドイツ産、プログレッシブブラックメタル、2009年3rd。10曲47分半。
Semenなんてつくバンドは暑苦しい南米産ブラックスラッシュと相場が決まっていると思っていたんですが、そんな幻想をぶち殺してくれるオシャレ系ブラックメタルバンド。
ブラックメタル黎明期の過激なオカルティズムから脱却し、ヘヴィメタルとして様式の確立したスタイリッシュなスウェディッシュブラックメタルをベースに、ポストロック・シューゲイザー的アプローチや現代ディプレ的陰鬱感など雑多な要素をアクセント程度に取り入れ、Klabautamannのようなプログレッシブなセンスで仕上げたような、スリリングで刺激的な変態エクストリームメタルが堪能できる


ポストロック的ダイナミズムを持ったゆったりミドル〜荒々しいブラックメタル的ブラスト爆走まで目まぐるしく展開するドラム轟音ポストロックを思わせるヘヴィネスを備えたギター&ベースによるKlabautamannアヴァンギャルドリフザクザクしたエッジーなギターによるズンズンメタリックなリフ・寒々しく荘厳なブリザードトレモロなどが構築するメロブラに、シューゲイザーブラック的儚げ涙腺刺激トレモロ・クリーンアルペジオPeste Noireを思わせる陰湿なリフ・アルペジオLifeloverのような都会ブラック的陰鬱リフColdworldを思わせるような悲しげフレーズを奏でるヴァイオリン冷え込むアンビエント/シンフォニックKeyしっとりアコギなど様々な要素が絡み合い、その上でブラックメタルらしいイーヴィルな喚きデスが噛みつくように絶叫する。SEやスピーカー越しのようなヴォーカルエフェクト、頻繁に用いられるセリフなどにインダストリアルな香もチラホラ。
基本となるブラックメタルサウンドがアグレッションを保ちつつ結構メロディアスであり、かつ先の読めないプログレッシブな展開の中で絡んでくる一つ一つの雑多なフレーズが軒並みキャッチーでわかりやすいため、あれよあれよと作品世界の中に引き込まれ没入没頭してしまう
ヴォーカルはありがちと言えばありがちなブラックメタルデスヴォイス
音質も良好。ギターのヒステリックなノイジーさは保ちつつ、ドラムやベースなど非常に歯切れのよいシャキシャキした音質。バランスも良く、ストレスなく聴ける。


というわけで、通常のブラックメタルとは異質な空気を持った、インテリジェンスを感じさせる一枚
とにかく先の読めない展開の中で色々な要素が交錯して作り上げられる非現実感漂うドラマ性がとびきりおもしろく、アルバム全編かなり楽しめた次第。
やはり近いのはKlabautamannだろうか。あちらよりもよりブラックメタル寄りであり、この個性的な作風はハマるとクセになります。
お気に入りは#2[Unter Bleigrauen Wolkenlasten]、#9[Rieke Stadt]。これらの曲が一番ポストブラックっぽく、また展開も激しくまさに今作品のハイライトといえる。
KlabautamannJanvsなどのプログレッシブな新世代ブラックメタルが好きな人にはかなりオススメ。前述したようにサウンドの基本が緊張感のあるメロディアスなブラックメタルであるため、最近のナヨナヨしたポストブラック勢があまり好きでない人も結構楽しめるんじゃないかな。
一風変わったブラックメタルが欲しい時にどーぞ。


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