Svarti Loghin:[Empty World]
スウェーデン産、ポストディプレッシブ/シューゲイザーブラックメタル、2008年1st。6曲44分弱。
ゴリゴリのブラックメタル産出国であるスウェーデン産という不意打ち的なバンドだが、これがまたAlcestと並んでシューゲイズブラックのお手本と言ってしまっても過言ではない、心に響くハートウォーミングブラックメタルとなっている。
ロックっぽいダイナミズムを備えた軽快なアップテンポを絡めつつゆったりミッドテンポで進行するオシャレなドラム、および温かくモダンな旋律を響かせるこれまたオシャレなベースライン(FenのEPぽい?)の上で、プリミティブブラック特有のシャリシャリギターが立体的に拡散したようなノイジーさのジャリジャリギターが、純朴で柔らかな陽光あふれる音色のクリーントーン/アコギとともに、どこまでも優しげ・センチメンタルでほんのりディプレッシブなアルペジオを奏で、その一方で、それらとは対照的な悲嘆に暮れ激しく嗚咽するようなリストカッティングな叫び声がのっかる。
Thraenenkindあたりを思わせる、シューゲイズブラックらしい儚く切ないトレモロ/リフももちろんあるが、ギャリギャリ耳障りに歪んだギターと瑞々しく生命力あふれるクリーンギターが奏でる優しげかつ繊細で温かなアルペジオで楽曲が満たされている点が個性的。これが実にAlcestっぽい癒しに満ちたアルペジオであり、超絶ドツボ、琴線に触れまくることこの上ない。
アルバム全編儚くも切ない癒しに満ちているが、Lifeloverなどに通ずるようなジクジクとした都会ブラック/リストカット的憂鬱感・倦怠感が感じられるあたりが何とも言えないメランコリーの演出となっている。
リズム面でも、ツーバスこそドコドコとメタリックだが、手元はほぼポストロック的。
その上絶叫ヴォーカルも強烈。LifeloverやLantlosのような情けなさ漂う人間臭い感情剥き出しの泣き叫び系であり、なりふり構わず絶望的に絶叫する様は悲愴感満点。癒し系の音楽性とはまるで裏腹なヴォーカルだが、だからこそ楽曲から滲み出る癒しに哀しみや翳りが生じてどうしようもない切なさを醸し出している。
というわけで、AlcestやFen、Liam、Heretoir、Thraenenkind、およびLantlosのシューゲイズパートなどの感傷的なシューゲイズブラックが好きなら問答無用で必聴・マストバイな一枚。
この手のブラックとしては珍しく胸を掻き毟るようなトレモロにはあまり頼っていない半面、ひたすら明るく切ないアルペジオで構成された楽曲は見事に心を打ち、正直なんで去年話題にならなかったのか不思議なくらい文句なしの素晴らしい出来栄え。
とくにタイトルトラックである#3[Empty World]はAlcestに自傷系ヴォーカルを加えたような最強クラスの癒し系ブラックメタルであり、この曲だけでもこのCDを買った価値があると断言できる。
「いいから黙って買え」級良盤指定。
Super Excellent!!!