Absurd:[Asgardsrei]
ドイツを代表する国家社会主義ブラックメタルのドン、Absurdの1999年EP。
何度も再発されており、その中身やジャケットもその都度マイナーチェンジされているようだが、僕が入手したのはおそらく2006年リリースのもの。最初のLPヴァージョンを曲順を変えて一曲ボーナス加えたものなのかな。
最近リリースされる音源では勇ましく雄々しいジャーマンヴァイキングのようなことをやっている彼らであるが、今作では名作1st路線のチープ極まりない軍歌調プリミティブブラックメタルとなっている。
タンバリンと空き缶でも叩いているかのようなポンコツ極まりないへっぽこドラム(打ち込み?)がトットコトットコ単調にマーチングし、ラジオの音域を絞りまくったようなチリチリジリジリしたペラッペラのギターがパンキッシュな青臭さのするオールドスクールなリフ、および勇ましい軍歌的リフ/ソロを奏で、その上でヒットラーヴォーカルが握り拳を振り上げ口角泡を飛ばしながら高らかに演説し、中国語っぽい演歌ヴォーカルがジャッキーチェンのEDのように朗々と軍歌を歌い上げ、軍服に身を包んだ赤ら顔のおっさんの酒焼けした濁声が青筋浮かべながらガナリまくる。
オープニングこそ弾丸飛び交う戦場のSEとヴァイキング調Keyによる厳かなインストであるが、#2以降は音質演奏楽曲と全てにおいてホントどうしようもないポンコツっぷりに度肝を抜かれる。常識的に考えて一般的なメタラーならあまりのひどさにゴミ箱一直線な代物であろうが、しかしこのラフなポンコツ感が、言うなればUGプリミティブならではの魅力を究めに極めた究極形とも言え、ハマるとどうしようもなく癖になる。
小気味良い疾走も絡めながらミドル主体に単調に進む楽曲は、ビコビコ響くベースが妙にグルーヴィに感じられることも相まって、あたかもヒットラーが用いた洗脳術さながらに聴く者を心地よいトリップへといざなう。
シンプルなリフ/ソロは派手さは欠片もないもののわかりやすくキャッチーであり、荒んだ殺伐感とのちのヴァイキング路線に通ずる武骨な勇ましさが感じられ何気に熱い。
またドイツ語のヴォーカルも前述したように一筋縄ではいかず、自分に酔い気味のヘタウマな演歌ヴォーカルは言うに及ばず、楽曲そっちのけで血管ブチ切れんほどに熱がこもり力みまくったガナリも逆にヘロヘロ感を増しているように感じられ、実にイイ感じ(笑)とくに#5のヒットラーヴォーカルは噴飯もの。
とうわけで、独特なオーラを放つキワモノNSブラックの素晴らしき迷作。鬼プリミティブだった1stよりさらに強烈。
周りから見ればネタみたいなことやってるのに、本人たちはいたって大真面目なあたりがかなりカルト。暑苦しいほどの気迫もとい鬼迫が滲み出まくっているため地下音源特有のヤバ気感たっぷり。
最近のヴァイキング路線もかっこいいけど、Absurdといったらやっぱこれでしょう。
とにかく音質も演奏もポンコツの極みであるためダメな人はとことんダメなんだろうけど、Nuit NoireやUrfaust、Circle of Ouroborusあたりのヘロヘロな感覚が味わえるプリミティブが好きな人は楽しめるんじゃないでしょうか。
もちろん僕はこの魔性の魅力(これほどこの表現がしっくりくる音源もそうはない)に完全ノックアウトされました(笑)