Wolves in the Throne Room:[Black Cascade]


皆さんご存知、母なる大自然を礼賛し文明社会を糾弾するUS産アトモスフェリック・ポストブラックメタルWolves in the Throne Roomの2009年3rd
Daymare Recordsよりリリースの国内盤変則デジパック。ボーナスディスクとして2009年リリースのEP[Malevolent Grain]がついてくる2nd同様のお買い得仕様。
高い人気を誇る1stおよび2ndで、まごう事なきブラックメタルサウンドでありながら古来よりの邪悪・暗黒・悪魔崇拝といったブラックメタルアイデンティティたるネガティブなイメージと決別した独自のスタイルを提示した彼らですが、今作ではその音楽性がさらに進化・深化されており、最高傑作と呼ぶにふさわしい素晴らしい一枚となっている


時に緩やかに、時に激烈にと緩急をつけながら迸る激情と衝動を叩きつけ荒れ狂う怒涛のドラム(ヤケッパチ感のあるデストラクティブなシンバルがツボ)に乗せ、ジリジリとノイジーでありつつも、ジワリと温かな湿り気と柔らかな肌触りとを感じさせる木目調サウンドディストーションギターが、ノルディックな荘厳さとヒーゼンなメランコリーとが高次元で融合された叙情トレモロを掻き鳴らし、荘厳で神秘的・幻想的なアトモスフェリックKeyが深遠かつ厳かに響き渡る。そうして作り上げられた崇高かつ壮麗・壮大なサウンドスケープの中で、気が触れたかのように歪んだ凄絶なデススクリームがヒステリックに喚き叫び散らす
4曲50分と相変わらずの大作路線だが、基本ファストかつハイテンション、ドラスティックかつドラマティックに展開していくため、冗長さは微塵も感じられない。
なんといっても、大幅に温かみを増し、牧歌的とすら表現できそうなアコースティック感のあるディストーションギターをはじめとした繊細かつ豪快なプロダクションが素晴らしいことこの上なく、クリアで音圧のある完璧なサウンドが構築されている。ビンテージものの機材を使って収録されたということであり、彼らのこだわりが見事に結実していると言えるだろう。
その紡ぎだされるメロディは旧き良き初期ノルウェー(特にBurzum)に根幹を持ちつつも、シューゲイザー系に通ずる優しく儚い叙情と、AgallochOctober Fallsのような自然的情緒を感じさせ、郷愁の念を感じずにはいられない。絶妙に楽曲に絡む腐葉土を踏み分けて木々の間を歩くような素朴なアコギがさらにその点を強化している。また大自然への畏怖と敬意を湛えたまばゆく神々しいKeyも存在感抜群。
Nathan Weaverの鬼気迫る凄まじい絶叫も相変わらず素晴らしいの一言。この全てに噛みつきズタズタに切り裂かんとする憎悪に満ちた発狂っぷりがたまらない。個人的に今一番かっこいいヴォーカリストの一人だと思います。


EP[Malevolent Grain]も同様の作風だが、#1では轟音シューゲイズチックな曲(Amesoeursっぽい)かつ妖艶な女性がメインヴォーカルとなっている点がフォーカスポイント。#2も含めアルバムとなんら遜色がない素晴らしい出来。


というわけで、ブラックメタル史に燦然と名を刻むであろう大名盤
オーセンティックなブラックメタルの影響を正しく受けつつ、さらに新時代へと踏み出したこのWolves in the Throne Roomの寒々しくも温かいノスタルジックなサウンドは他の追随を許さない極みへと昇りつめてしまった感がある。その高い演奏力や緊張感のある作曲センス、農耕系ステートメントを含めた揺るぎないオリジナリティと、ブラックメタルシーン以外からの指示を受けていることも至極当然と言える。
前作までを気に入った人なら楽しめること間違いなし。
期待値がかなり高かったにも関わらず、その期待をさらにとび越え骨の髄から気に入ってしまった次第。EPもすばらしいので、買うなら国内盤推奨。
問答無用で爆裂おすすめ!!


・Official SiteアメリカではかのトレモロフェチブラックKralliceと一緒にツアー回ったりしてるらしい。なんといううらやま>>アメリカ人。超見たい。
・Myspace