Scarlet Youth:[Breaking the Patterns]
フィンランド産、ネオ・シューゲイザー5人組の2009年6曲入りデビューEP。二つ折り紙パックでのリリース。
こるぴさんに教えていただいたこのバンド、ディスクユニオンから引用すると
主なメンバーはフィンランド・シーンでは名の通ったバンドのメンバーで、CUREなゴシック・ロックを鳴らすSHAMRAIN、2001年にフィンランドのグラミー賞でベスト・ロック・アクトを獲得した人気バンドKEMOPETROL、NEW WAVE風なICONCRASH、そしてヴォーカルにはドイツ産シューゲイザー・ソロ・ユニットであるSIDEWAYTOWNのMARKUSという実力者揃いの布陣 !
ということだそうで。なんかそうそうたる面子だそうですが僕はSidewaytownしかわかりません。
しかしこれ、そんなことはつゆほども知らなくとも、甘美なメロディと胸が苦しくなるようなノスタルジーに骨の髄まで酔い痴れることができる素晴らしい一枚。
甘美に響き渡る美しく幻想的な音色のクリーンギター/アコギにより紡がれる儚く繊細だが心躍るほどポップなメロディ、心地よく歪められたノイジーギターの強烈にノスタルジーを刺激するメランコリックな旋律、シンプルでありながら温かくキャッチーなベースライン、天上から降り注ぐエレクトロニカによる幾重にも重ねられた柔らかな光と音のレイヤーが、耽美と慈愛に満ちた音空間を構築し、その上でMarkus Baltes氏がその切なげな美声でもって溜め息交じりに歌い上げるといった、蕩けるように甘い轟音の残響と残響のはざまに揺らめく恍惚感にどっぷりと浸かることができる至極のドリームポップ・シューゲイザー。
楽曲はSlowdiveを思わせるマターリスローテンポから軽快なアップテンポまで。
幻想的・神秘的なベールに包まれたデイドリーム感はSidewaytownを凌ぎ、一聴して感じるのはSidewaytownがSlowdive寄りになったか(#1[Gleaming Endless Ocean])という印象。
しかしなんといっても幻想的フレーズから切なく琴線を刺激する儚げなフレーズ、浮遊感を覚えるほどにポップなフレーズに至るまでとにかくメロディが至宝の出来栄えで、そのあまりのキャッチーさにガッツリ心奪われてしまう。
またヴォーカルも実に素晴らしく、まるでデフォルトで泣いているかのような、Sidewaytownより切なさ5割増しの美しくセクシーな歌声が堪能できる。AlcestでのNeige御大を思わせるファルセット交じりの夢見るような歌い方であり、殊更に憂いと切なさが強調されたノスタルジック極まりない声色が強く心を打つ。
#5ではゴシックメタルのような女性ヴォーカル(Liv嬢似?)が伸びやかな美声を披露しており、これまたいい感じのしっとり感。
というわけで、ドリーミーなポップネスと儚いノスタルジーとが麻薬的な陶酔と切ない癒しを与えてくれる獄甘ネオシューゲの好盤。
お気に入りは#2[Wave Goodbye]、および#6[Sunshine Girl]。#2は、俗世のくびきから解放されたネロとパトラッシュがウフフアハハと笑いながら天を飛び回っているかのような、切ない幸福感のあるメロディと一度聴いたら耳から離れない強烈な歌メロが強く涙を誘う名曲。#6は何度聞いても飛翔感のあるシンセのメロディに一発ノックアウトされる。
温かく優しいアコギ/アルペジオが琴線に触れまくる#4[High on Sky]などはAlcestが好きな人ならきっと楽しめるだろう。
Sidewaytownが好きなら迷わず必修だし、シューゲイザーとか聞かないブラックメタラーさんでもAlcestを気に入った方には是非とも聴いていただきたい激オススメの一枚。
こんないいバンドを教えてくだすったこるぴさんに感謝です。