Celestia:[Dead Insecta Sequestration]


Mortifera、元Peste Noire等でおなじみ、かのDrakkar社長Noktuによるベテラン・フレンチプリミティブブラックメタル、2003年コンピレーションアルバム。2002年に行われたライヴ音源を追加してのApparitia Recordingsによる2008年再発盤。
なんでも2003年にAgonia Recordsからリリースされたオリジナル盤は音質やら装調やらひどかったらしく、Nokutuもたいそうご立腹されていたようであるが、この音源はおそらくNokutuも納得がいくであろうと思われる、アルバム同様のスリップケースがついたセレブ感あふれる豪奢なつくりとプリミティブとしてはいたって普通(むしろ良いくらい)の音質となっている。


ジャリジャリと歪んだギターによる憂鬱で儚げかつ悲しくも耽美的なトレモロジャッジャジャッジャという感傷的な響きを持った独特のリフ捌きトレモロも駆使するメロウなベース、物憂げなアコギ、およびNokutu社長醜くねじくれた強烈にネチっこい泣きガナリが炸裂する、いかにもおフランスな気品と陰鬱なメンコリズム溢れる軽く病的なプリミティブブラックメタル
ミドル〜スローテンポ絡めつつ、基本チープなドラムが荒々しくブラスト疾走している。
前半の本編は、#1・#5・#61st収録曲、#2Motifera1stのラストでカバーしていた曲、そして#7が偉大なるBurzum[Ea, Lord of the Depths]のカバーとなっている。
アルバムより生々しいRawな音質であり、妙に高音がキンキンしていてあまり耳には優しくないがプリ好きにはむしろそこがイイ的な音質。
1stより疾走気味であり、よりテンションが高い印象。
またNoktu社長のヴォーカルがアルバムに輪をかけて素晴らしもとい気持ち悪く一層泣きの色が濃いネチネチとしたヒステリックな嘆き・泣きごと系ガナリ声が堪能できる。もうホントこの声は唯一無二で素敵ですね。
結局のところ初潮初聴となる曲は#3#4の二曲であるが、どちらもバタバタしたブラストのRawな疾走感と初期Mutiilationを彷彿とさせるような鬱屈とした暗黒美学を感じさせる闇病みメロディがたまらなくかっこいい。
#3Noktu社長絡みのバンドには珍しくオールドスクールな展開も交えたソリッド・ストレートで攻撃的な曲。ヴォーカルがキマりまくっている。
一際プリミティブ色の強い#4初期Mutiilationにも通ずるヒステリックな虫の羽音系高音トレモロが実にメロウかつ病んでいて素晴らしい。中盤〜終盤の、どうしようもなく壊れたメロディのギターソロ〜ブラスト爆走の展開が神がかっている。
またBurzum初期の名曲をカバーした#7も実に素晴らしい。カバーがあるとは知らなかったので聴いた瞬間「これは!」と思わずニンマリ。アレンジのせいもあるだろうが、こうして聴くとリフがこのCelestiaに通ずる気だるく悲壮的な憂鬱感を感じさせ、改めてBurzumの偉大さを実感。Noktu社長のヴォーカルスタイルがCount一族であることもあり、初期ノルウェー勢ではBurzumが一番好きな身としては非常に懐かしみながら楽しめる好カバーとなっている


#8〜#14には2002年に行われたライヴが収録されている。2002年ということで、1stの曲が中心。
音質はヴォーカルとドラムのヴォリュームが大きくギターが微妙に引っ込みがち。しかし音の分離はよくメロディを奏でるベースもしっかりと聞こえ、ストレスなく聴ける。結構忠実に音源を再現しており、ライヴということで微妙に走り気味であるが叙情味豊かな憂鬱メロディとねちっこいヴォーカルが楽しめる
しかし何より気になるのが観客の雑談。もはや歓声ですらない、おまえら曲全く聴いてないだろwとツッコミたくなるくらい好き勝手くっちゃべってる声が演奏並みかそれ以上の音量で録音されている(笑)Satanic Warmasterのライブアルバムでも感じたが、さすがに根暗メタルの代名詞たるブラックとはいえ、ライヴとなると観客はみんな陽気なのね(笑)「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」など掛け声なんかもあったりしてめっちゃ楽しそう。
しかしそんな能天気な客に反してNoktu社長は相変わらず素晴らしいパフォーマンスを披露しており、強烈な泣きガナリから邪悪な呪詛ヴォーカル、MCに至るまで雰囲気作りもバッチリ。


というわけで、アルバム未収録曲や、ここ日本ではおそらく死ぬまでお目にかかれないであろう貴重なライヴ音源が聴けるNoktu社長ファン必携の好盤
もう何度聞いたかわからない1st収録曲も別ヴァージョンということで新鮮な気持ちで聴くことができた。
とくに#4Celestia1st初期Mutiilationの中間のような曲で非常に素晴らしくツボ。
またライヴ音源も本場の熱い空気?が感じられ、日本もこれくらいブラックが白眼視され後ろ指さされることなく嗜好品としてみんなで楽しめる日が来ればいいのにとちょっと羨ましかったり。
ともあれ、やっぱり自分はフレンチブラックがどうしようもなく好きなんだなと感じた一枚
CelestiaMoritiferaが堪らなく好きという僕のようなNoktu社長ファンはもちろんのこと、Mutiilationに代表される悲愴的かつ憂鬱なフレンチカルトプリミティブが好きなら買って損はない内容だと感じた次第。
Celestia最高!!


・Official Webpage
・New Official Website (archived at Wayback Machine)
・Myspace