Coldworld:[Melancholie2]


ドイツ産、極寒ディプレッシブ/アンビエントブラックメタル、2008年1stGeorg Börnerが全ての楽器を手掛けている。
凄い。
ブラックメタルという音楽が生まれてそろそろ20年に達しようかという今、また一つブラックメタル史に名を残す名作が誕生しました


凄まじい哀愁と悲愴感を放つジャリジャリジャージャーノイジーなギターのブリザードトレモロと冷たく神秘的なアンビエントKeyが空間を埋め尽くす、凍てついた鬱系ブラックメタル
ゆったりミドルテンポ〜2ビート疾走〜ブラスト爆走パートまでドラマチックといえるほどメリハリを効かせて展開している。
ディプレッシブといっても自殺系のようなドロドロジクジクしたネガティブさは一切なく、ノスタルジックとも表現できるような澄み切ったメランコリーに満ち溢れている
とにかく一寸先すら見えない猛吹雪を思わせる獄コールドなリフの数々が、聴いていて胸が締め付けられ苦しくなるほどメロウメロウメロウで、琴線に触れまくる北欧ブラック的な肌を突き刺し肺を凍りつかせる冷たさと、シューゲイザー系ブラックのような心に突き刺さる儚さ・切なさといったものが見事なまでに両立されており、当代随一の破壊力で聴く者に哀切なるメロディの奔流をぶつけてくる。ギターの歪み方も感傷的で実に素晴らしく、耳に心地よくノイジーでありながら空間的な奥行きをも感じさせる見事な音質。
さらに美しく荘厳に響き渡るアンビエントKeyがこれまたとてつもなく冷え切っており、虚無感と浮遊感を漂わせ、神秘的、幻想的な雰囲気を作り出している
身も心も冷たく凍てついてしまうような絶対零度の音像ながら、時折まばゆいばかりの神々しさを感じさせる救いのメロディも垣間見え、またこのメロディの殺傷力たるや筆舌に尽くしがたいほど凄まじく、悲哀に冷え切った心に沁み渡り感動的なほど切なくも癒される
そうした、ギターとKeyが生み出すメランコリックなメロディがまさ吹きすさぶブリザードが如く音の塊となって疾走・爆走する様は


ヴォーカルは内からの狂気を発散するかのような高音喚き絶叫。悲愴的な感情を爆発させる非常に鬼気迫る邪悪なヴォーカル。
また時折用いられるクワイアコーラスがKeyと同様の神秘性を醸し出している。


どの曲も目を見張るほどに素晴らしく、#3[Winterreise]#6[Stille]のようなインスト曲に至るまで捨て曲が一切ない。
そうしたアルバム中でも殊更圧倒的な存在感の#1[Dream of a Dead Sun]は、チョモランマ山頂で命を賭けて吹雪の音を録音してきましたみたいな、凄絶なブリザード感。
物悲しげなヴァイオリンから導入される#2[Tortured by Solitude]、この曲は激しくツボ。もう冒頭の時点でかなり泣けるが、ヴァイオリンのメロを引き継ぎ時にユニゾンするそこはかとなく明るく感じられるメロウなトレモロがどうしようもないほどに涙を誘い、神秘的なKeyが冷たい音色で暖かなメロディを奏でている
#4[SchmerzensSchreie]体感温度が3度ぐらい下がりそうなほど寒い。疾走パートのあまりの神々しさに罪を悔い改めたくなる。
#5[Red Snow]、疾走パートでのヒステリックなトレモロと珍しくモロブラックメタルトレモロがナイス。
#5#6にかけての哀しみに打ちひしがれたようなアコギは涙なくしては聴けないくらいに切ない
そして今作でもっとも好きな曲#7[Hymn to Eternal Frost]。悲愴感漂うヴァイオリンもさることながら、この曲の疾走パートは本当にヤバい。

重い病に侵され町を追い出された少年が、雪の降る裏路地を骨と皮だけになった体を引きずりながら彷徨い歩き、「パ○ラッシュ、僕もう疲れちゃったよ」と言わんばかりに孤独にその生命の灯が今まさに儚く消え去ろうとした瞬間、天界から降りてきた悠然と翼をはためかせ温かな微笑をたたえた天の御使いが少年に優しく手を差し伸べる。その天使に天への階段へといざなわれると、遥か高みにあるその階段の向こうでは死に別れた家族がまばゆいばかりの光に包まれつつ笑顔でこちらに手を振っていて、「あぁ、お父さん、お母さん、メアリー(早くに亡くなった妹)。みんな幸せにそこで暮らしていたんだね・・・」と温かな涙に頬を濡らしながらも満ち足りた気持ちで幸福の王国への門をくぐる・・・・・・・

みたいな、そんなメロディ(遠い目)このメロディと悲愴的なデス声の共宴は泣ける泣ける。何度聞いても恥ずかしいくらい悶絶してしまうような恐るべき殺傷力。
#8[My Dead Bride]は短い曲だけど#7の雰囲気を引きずったような除情味溢れる曲。
#9[Escape]は楽曲を締めくくるのにふさわしい幻想的なインスト。
ほんと、非の打ちどころがないくらい完成度の高い楽曲軍に感服。


というわけで、涙腺決壊系悲哀極寒デイプレッシブブラックの超神盤
鬱ブラックの、というよりもブラックメタルの普及の名作
いたるところで絶賛されているのも納得の内容だ。
ジャケのような心象風景を思い描かずにはいられない。
魂まで凍りつくような冷気と狂おしいほど儚く美しいメランコリーの相乗効果でどっぷりと感傷的な気分に浸れ、切なくも癒される。
これはもうブラックメタルと形容される音楽が好きなら絶対に聞いておかねばならない作品だろう。
今年に入るまでスルーしていたことが激しく悔やまれるが、それでも本当にこの作品に出会えてよかったと心の底から思う。
これを読んで未だこれを聞いてない人は、騙されたと思ってぜひ聴いてみてほしい。
どう間違っても損はしないだろう。
Coldworld、恐るべし。


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