COALTAR OF THE DEEPERS:「THE BREASTROKE」


天才NARASAKI率いるカリスマ・シューゲイザーメタル、91年〜98年に収録された音源から名曲ばかりを選りすぐった超ベストアルバムにして至高の逸品。
シューゲイザーの本懐とも言える轟音美メロが徹底されつつも、メタル、ハードコアパンクオルタナティブアンビエントボサノヴァ多種多様なジャンルの影響をスタイリッシュに収斂・昇華させた独創的かつエネルギッシュな楽曲群は凄まじい完成度を誇り、そのあまりの音楽性の高さに、Alcestに次ぐ衝撃を受けた作品。


端的に言ってしまえばMy Bloodey Valentine + Ride meets メタル」
My Bloody Valentineを彷彿とさせるノイズまみれのサイケデリックかつドリーミーなメロディを響かせながら、蒼く爽快なRide的ドライブ感で疾走する轟音シューゲイザー/オルタナロック
轟々と轟き津波のように押し寄せ氾濫するシューゲイズ的ギターノイズの攻撃性と、メタリックな切れ味/ハードコアパンクの熱をもったリフの攻撃性が絶妙にブレンドされた怒涛のギターによって紡ぎだされる幻想的で爽やかなメロディは、心地よい浮遊感を漂わせつつ強烈なポップネスでもって聴く者を恍惚とした陶酔感に引きずり込む
何かに取りつかれたかのような焦燥感を感じさせるトリッキーかつアグレッシブなドラムが前のめりにひた走り、それに鼓舞されるかのように暴走する歓喜と昂揚感に満ち溢れた圧倒的なギターノイズの快楽に骨の髄まで痺れる


またNARASAKI淡く漂う少年のように無垢なヴォーカルも非常に心地よい。鮮烈なほどエネルギーに満ちたグラマラスな楽曲とは相反するように穏やかで繊細なヴォーカルスタイルとその甘々ポップにたゆたう歌メロがいかにもシューゲイズ的であるが、時にはシャウトしたりデス声出したりと感情豊かでもある。


前述したとおり雑多なジャンルの手法・フレーズを目いっぱい配しながらも、乱雑さ・散漫さは微塵も感じさせないスマートな音像は素晴らしいの一言。見事なまでにブレのないCoaltar of the Deepersサウンドが確立されている
またベースも非常にいい仕事をしており、#10などでは小学生時代の夕日を思い出すような切ないギターのメロディもさることながら、涙が出るほど琴線に触れるベースラインがなにより耳を惹く。一音たりとも無駄なく楽曲を作り上げるバンドとしての充実したイマジネーションが格の違いを感じさせる。


というわけで、唯一無二の才能が抑えきれないエネルギーと感情を発露させたシューゲイザーの神盤。
様々な表情を見せる色鮮やかなギターにより紡ぎだされる若々しいみずみずしさと淡い繊細さの感じられるメロディが生を謳歌し、初期衝動に突き動かされたようなオルタナティブサウンドが気持ちいいことこの上ない。
どの曲も非の打ちどころがないほどに完成されており、もろにMy Bloodey Valentineの影響を感じさせながら、ミサトさん「ここに来るわ!」など遊び心あふれる多彩なフックを絶妙に盛り込んだエネルギッシュかつキャッチーでオリジナリティ溢れる楽曲の数々に惚れ惚れとしてしまう
とくに#5#7#13で聴かれる脳髄にヤスリをかけられているかのような粗く鋭いハーシュなギターノイズの氾濫はマジで鳥肌もの。最初聴いた時は、そうそう、これが聴きたかったんだよな〜と一人悦に入ってしまった次第。
98年にリリースされたが廃盤となり、最近まで入手困難な状況が続いていたが、去年再発された模様(自分が入手したのはオリジナル盤)。
これ以上ないほど快楽的な音の洪水、この機会にぜひ多くの方に体験していただきたい。
この作品に出会えて本当によかった。


・オフィシャルサイト
・Myspace