Celestia:「Frigidiis Apotheosia : Abstinencia Genesiis」


フランスの耽美派プリミティブ・ブラックメタル、2008年2nd
DrakkarNoktu社長によるバンドとして有名だが、いつの間にかみんな大好きXasthurMalefic御大がKeyとして参加しており、二人しかいないのに十分豪華メンバーたる貫禄。いや、実際この組み合わせはちょっと凄すぎる気がする。
CDにはかなり凝った作りの豪華スリップケースが付属している。そのスリップケースからブックレットに至るまで徹底された美的意識が感じられ、こういったアートワークからもこのバンドが凡百のバンドとは格が違うということが伺える。


さて、以前書いた1stのレビューではノルウェイジャンスタイルとか言ってますが、我ながらとんでもないレビューを書いたもんです(笑)確かにこの吹きすさぶ吹雪のような寒々しさと荘厳さはノルウェーに通ずるものがあるけど、これはどこをどう聞いても紛うことなき純血のフレンチ・ブラックメタル
今作も基本的には前作を踏襲した、憂鬱で儚く美しいプリミティブ/トゥルー・スタイルであるが、前作に比べるとミッドテンポ主体になったうえフランスっぽい美的感覚がより顕著になり、アコギの出番も増え、猛烈にメランコリックな音像となっている
またMaleficによる凍てついた神秘的Keyも随所で効果的に用いられているため、陰鬱な雰囲気が立ち込めているのと同時に荘厳な神々しさも感じられ、なんだかただならぬ様相を呈している。過去これほどまでに悲しく美しいブラックメタルが存在しただろうか。


憂鬱・頽廃的でありながら儚く美しい耽美的リフは、フランス特有のどこか爽やかな切なさに満ちており、除情味あふれるトレモロからバッキングに至るまで激しく琴線に触れる。むせび泣くトレモロも極上だが、胸を掻きむしるようなバッキングの上に憂いに満ちたアコギがしっとりとするのもこれまた乙。
またこのCelestiaはブラックにしてはかなりベースがしっかりしていて、頻繁にメロディを奏でては除情味に拍車をかけており、これがなかなかどうして非常にいい仕事をしている。
そしてそこにうっすらと被さる清浄感すら漂うKeyの音色。Xasthurとはまた違った趣のホーリーな音色にうっとりしてしまう。


Noktu社長のヴォーカルは喉に痰が絡んでいるかのようなねちっこいガナリ声。クセがありダメな人はダメかもしれないが、非常に邪悪。また#6でのMeyh'nach的気だるい呻きも素晴らしい。フランスのカルトバンドはみんなヴォーカルが極悪でたまらんね。


音質は良好で、神経を逆撫でするようなノイジーさでありながら音圧もある。粒が細かくジャリジャリしたブリザードギターはひんやりと冷たい感触。ドカドカ荒々しいドラムはタイトかつ迫力のある生々しい音でグッド。洗練された繊細な音作りは流石としか言いようがない。


もはや他の追随を許さない、凄まじい完成度を誇る「フランス流嘆きのブラックメタル」が繰り広げられている。
前作も凄かったが今作はさらにその上を行く湿り具合。なんというか、深みが増した。滲み出る雰囲気には高貴さすら漂わせ、もう音質からしてメランコリックな気さえしてくる。
メロディの質自体もそうだが、鬱に沈みこむようなしっとりパートが多く、荒々しく攻撃的だった前作に比べ寂しげな展開が増えたため、儚さ憂鬱さに一層磨きがかかっている。もちろんここぞというところではファストに攻めてくれるため、劇的と言ってもいいほど展開に起伏があり、聴き応えがある。
Noktu社長の並々ならぬセンスには脱帽だ。もちろんMalefic御大の貢献度も計り知れない。
個人的には前作以上に胸に響いた次第。前作が気に入った人は勿論、フランスのブラックメタルが好きな人は避けては通れない傑作だ。Fantastic!!!


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