Nuit Noire:「Infantile Espieglery」


フランスの【新感覚脱力系ブラックメタル】Nuit Noireの2006年2nd。自称The Only Faerical Blasting Punk Band
前作は高品質ポンコツ(←矛盾)ブラックにやる気のない脱力ヴォーカルを乗せるという、予想の遥か斜め上を行く妙技で一部のコアなファンを魅了した彼ら。
今作では、さらにカラオケで絡みづらいタイプの歌声を披露しそうな女性ヴォーカル(笑)も加わり独自の不健康ランドをより強固なものとしておりまする


#1#4はちょっち控えめで、パンキッシュなノリとポンコツ具合は紛れもなくNuit Noireサウンドだけど、よりアンニュイな部分に重きを置いているよう。確かにかっこいいんだけど、印象的なトレモロリフも顔を出さず、まともになったとは言わないが、前作の強烈な毒々しさは影を潜めたか?


と思ったのも束の間。本領発揮は#5から。こっから猛烈にカッコよくなる!!
フレンチ・プリミティブらしいシリアスで鬱屈としつつどこかしら爽やかで強烈に耳を惹くリフ、憂鬱なメロディを奏でるヨレヨレトレモロの鋭い切れ味は、ハッキリ言って前作以上。メロディの質が前作より普遍的なフレンチ・ブラックっぽくなっており、#5#6なんかはフレンチ好きにはたまらないんじゃないだろうか。
また、ドラムのミドルテンポ〜疾走〜爆走のツボを心得たギアチェンジと絶妙な軽快っぷりはかなりの快感指数。


ギターの音が若干厚みを増しているせいもあるけど、前作でみられた薄っぺらで壊れた感覚が希薄になって、かっちりまとまった印象。しかし個性が失われたわけではなくて、散漫としていた各要素が一つのベクトルに収束されアイデンティティを維持したままブラックメタルとしてより高みへと登りつめたといっていいだろう。


そしてなんといってもこのバンドの個性の塊である脱力ヴォーカルは今作でももちろん健在。
Tenebras泣きの入ったナヨナヨ声からヒステリックな絶叫Emilie嬢ふてぶてしさ溢れる美声(笑)が重なり、間抜け一直線。なんつーか、別れを告げる女と泣きついて必死に引きとめる男みたいな感じがなんとも情けなさを倍増させるwww


ヴォーカルワークはより魅力的に、楽曲はより高品質なフレンチ・ブラックにと、完全にパワーアップしている。
ピンと張りつめた緊張感のあるメロディと、気だるい男女ヴォーカルのなんともいえないグダグダっぷりの対照的な組み合わせ、そして全編に漂うアンニュイな空気感が妙に気持ちいい。
奇抜なスタイルばかりがもてはやされるが、その実芯の部分は非常に完成度の高いプリミティブ・ブラックであり、すでにプリブラ必聴盤の域に達していると個人的には思う。なによりこの突き抜けたオリジナリティーは単純に一聴の価値がある
危険な香りと胡散臭さが漂っていた前作にインパクトこそ劣るものの、前作が気に入った人なら当然今作も気に入るはず。特にアルバム後半はマジで良曲揃い。
今年出る新譜が楽しみでならないな。


余談だが、ジャケットからブックレット、そして裏ジャケにかけて謎の寸劇が繰り広げられており、ますます得体のしれない雰囲気が漂っているw


・Official Site:gdgd
・Official MySpace:百見は一聞に如かず。
・Unofficial Myspace:1stまでの音源が試聴可。