Sleeping Peonies:[Ghosts, And Other Things]


UK産、ポストディプレッシブ・ブラックメタルアンビエントシューゲイザー、2011年2nd-EP
8曲27分半。
Khrysanthoneyより150枚限定で黒封筒リリース。


【キャッチコピー】
鈍く響く反響と残響の濃霧の中で、繊細で美しくも虚無感と悲愴感で一杯の儚げメロディが幽玄に浮遊する幻想ブラックゲイズ/ゴーストゲイズ!
【スタイル】
鈍重な圧殺系ベース/神秘的なアンビエンスに満ちたシンセサイザーがボォボォボワンボワンと反響することでヒビ割れたノイズ空間を構築し、そこに軽い打ち込みドラムが急き立てる様なブラスト、軽快なアップテンポ等を、楽曲の骨格としてでなくあくまで感情の演出といった様相で適宜絡め、ノイズの雲間に消え入りそうなほど繊細で儚げなクリーンギター/ザラっとした質感で切り込んでくるディストーションギターが、ほんのりと明るさや爽やかさを滲ませつつも胸が張り裂けんばかりに儚く切ない痛烈高音トレモロ、幻想的アルペジオを奏で、淡く浮遊するシンセ、ポロロンポロンと流麗な音色のKeyが寂寥感を募らせるように哀しく美しいリリカルな旋律を奏でる。
ヴォーカルは痛々しいほどに泣き叫ぶ鬱系絶叫。ガナルというよりは、ただただどうしようもない悲哀の感情をぶちまけるように悲痛な叫び声を張り上げており、楽曲の哀しみに満ちた雰囲気を殊更に強調している。
【ポイント】
とにもかくにも儚く切ない涙腺決壊メロディと幻想的・神秘的な残響に覆い尽くされ、涙とノイズに塗り込められた美しき楽曲群にただただ悶絶。
【蛇足】
「眠れるちんこ」「居眠りちんちん」「おねむなおちんちん」等と一部のマニアから熱視線を送られているUKのシューゲブラック。
150枚限定で、通常版ですら黒封筒にポスター、紐綴じ冊子状ブックレットのセットということで、かなりの気合の入りっぷり。
さらにうち30枚(だったかな?)のスペシャルバージョンは金色の封筒に手書き歌詞カードなんかも入っていた模様。
いやいや、これがまたとんでもなくノスタルジックでエモーショナルなシューゲイザーブラックメタルとなっており、おじさん恥ずかしくも涙が止まりません。
いまやゲシュタルト崩壊しそうになるほど目に入ってくる「シューゲブラック」という表現だが、その中でもこの独りバンドは抜きん出てシューゲイザーへの歩み寄りが進んでしまっている。
なんかこの文言すら僕は最近よく使っているような気がしないでもない(笑)が、しかしことここまで至ってしまうといわゆる「ヘヴィメタル」的要素はほぼ感じ取ることが出来ず、アンビエント作品を聴いているような聴き心地であることは事実。
このことは先にも述べたように、楽曲の根幹にドラムによるリズムがあるのではなく、あくまでギター、ベース、シンセサイザーの作る空気が土台となっていることからも顕著に感じられる。
ノイズに押しつぶされそうな息苦しさの中を、弱弱しくもり精一杯の凛々しさを湛えて哀しくも美しいメロウなメロディがキリキリと切り込んでくる様には胸が痛くなってしまう。
そうしたメロディや悲痛なヴォーカルも素晴らしいが、やはり特筆すべきは美しく幻想的・神秘的な音空間を構築している点だろう。
このどこか虚無感漂う夢幻的な世界観によってアルバムを聴いている間は別世界にいるような、薄っぺらだが胸を掴むに有り余る夢心地に浸ることが出来る点が、このバンドの持つ他を圧倒する力なのではないかと思う。
ブラックメタルでもシューゲイザーでもない、独立した「シューゲイザーブラック」というスタイルを確かに提示しており、そういう意味で自称「ブラックゲイズ」という言葉は音楽性とまさに一対一に対応した、言い得て妙な表現であると思う。
というわけで、世に言うシューゲイザーブラックと多くの共通点を持ちながら独自の世界観を作り上げているセンスに富んだ本作品、Pest Pro.白コンピMoroseOnryoBook of Sandあたりが好きな人は聴いておいてまず損は無いはず。
昨年リリースされた100枚限定の1st-EPは完売、後追いの人間からは既に幻のEPみたいな扱いも受け始めている節があり、また本作をリリースしたKhrysanthoneyが現在止まっているような感じなので、興味をもたれた方は入手可能なうちに買っておくのがよろしいかと。
と言いながらも、現在Bandcampにて1.4GBPからデジタルアルバムも購入できるので、本作はそこまで入手困難ではなく気軽に楽しめる。今のところは。
ともかく、シューゲブラックに目がない当ブログでは無論オススメ認定の一枚。
【お気に入り】
#3[Lisps, and Candyfloss Wisps]:何度聴いても胸が苦しくなる絶品。
【オフィシャルサイト】
http://sleepingpeonies.tumblr.com/
MySpace
http://www.myspace.com/sleepingpeonies
【Bandcamp】
http://sleepingpeonies.bandcamp.com/
既に新作のレコーディングもしているようなので、次回作が楽しみだ。