Singhasari:[Kebangkitan Nusantara]


マレーシア産、自称"Nusantara Pagan Folk Metal"、2010年EP。8曲35分弱。
タイのHellhouse 666 Productionが100本限定テープ、アメリカのOctober's Mist Recordsが100枚限定プロCD、オランダのSvartgalgh Recordsが33枚限定CDR、マレーシアのイスラムEastern Voice ProductionがリミックスプロCDR、国籍不明SatanicaがCDRをと、とにかくいろんなとこで細々とリリースされている作品。
僕が買ったのはOctober's Mist盤。


【キャッチコピー】
UGプリミティブ的カサカサの厭世感と、東洋自然宗教独特の薄気味悪く不気味でカルトな空気感が見事に化学反応した土着信仰寺院系真性異教プリミティブ
【一言】
カンカンバコバコ硬く乾いたグラインディングな音でミドル絡めながら軽快に疾走するドラム、パーカッシブなベースの構築するRawなリズムに乗せて、埃臭く歪んだギターがオリエンタルな情緒を滲ませた適度にメロディックかつ殺伐としたプリミティブ/ペイガン的トレモロ・リフ、気味の悪いソロ、ミスティックなアルペジオオールドスクールリフなどを奏で、木霊が響くようにリバーブする生臭く湿ったガナリヴォーカルがヤケクソにガナリ散らす。
【二言】
そこへ、祈祷するような間抜け系朗々ノーマルヴォイス、笛・木琴(?)・パーカッションなど、種々の妖しげ・不気味な儀式的サウンドが頻繁かつ絶妙に絡む。
【三言】
DarkthroneBurzum由来のベーシックなオールドスクールプリミティブに、怪しげ・妖しげな東洋民族要素が巧妙に練り込まれており、シリアスかつ不気味で近づき難い呪術儀式めいた瘴気が充満している。
【蛇足】
「ヌサンタラ」とは、古ジャワ語で「たくさんの島々、諸島、群島」という意味で、転じてインドネシアのことを指すんだとか。
さらにバンド名「Singhasari」は13世紀にジャワ東部で栄えたシンガサリ王国、アルバムタイトルは「The Rise of Nusantara」の意ということで、本気印花丸の真性愛国ご先祖さま万歳ブラックメタル
フォークブラックの一手法として、凶悪なブラックメタルサウンドと牧歌的なフォークロアの織りなすチグハグな違和感を楽しむという方法論が存在するが、このSinghasariエスニックな叙情をあくまでブラックメタルの本来持つ神秘性として活用することで、オールドスクールブラックとしてストレートにかっこいい(#4[Rajawali]を筆頭に)のに、独特の泥臭い土着感を持った個性的サウンドを構築することに成功している。
このアプローチですぐに思い出すのはAsmegin1st、記憶に新しいところでは日本が誇る神道ブラックメタル身殺あたり。
あくまでアプローチの仕方についてであって音それ自体はAsmeginとは全然違う音なわけだが、身殺とは同じアジアの血が流れているからか、#6[Pertempuran Gelap (Demi Kehormatan Senggaramasin)]を始めとして似たようなメロディセンス・雰囲気が感じられる。
アジア・オセアニア周辺だと、原理主義に傾倒し過ぎて味気なくなってしまった(その味気なさが良かったりするんだけど)Striborgのような厭世プリミティブか、大量生産される鬱・自殺系か、暑苦しい汚れスラッシン・ブラック/デスかというイメージを持っていたので、こうしたアジアに出自を持つことを誇らしくメロディに反映させる真性ブラックメタルが出てきたのはとても良い傾向だと思う
今後こうしたバンドが増えてくると、アジアのシーンが独自のポジションを確立していけるんじゃないだろうか。
そう感じさせてくれる、身殺と並んでアジアンブラックの本領発揮とも言える一枚。
辺境B級ペイガンとか、胡散臭いけど気合だけはガチで伝わってくるようなタイプのバンドが好きな人におすすめ。
【お気に入り】
#2[Srivijaya]:「スリーヴィジャ〜ヤァ」の耳残留力は異常。
【傾向と対策】
身殺、ぐらいしか思いつかない。個性的。
MySpace
http://www.myspace.com/singhasari