身殺(Mïsogi):[遠ツ神 笑ミ給ヘ(Tofotukami Wemitamafe)]


国産笛入りペイガンブラックメタル、2010年1st。9曲48分強。
Sabbathid Recordsよりリリース。
Sighとならんで偉大なる国産ブラックメタルの系譜、凶音の元メンバーである東虎主催のバンド。
ドラマーも同じく元凶音黄泉槌。番長SSORCのギタリスト、Hnickkarがライブで笛を吹いているようだ。


【キャッチコピー】
古の薫り漂う雅の風情と呪術的暗黒感が交差し原始日本的情緒がアグレッシブかつ妖艶に乱舞する陰陽師式ワビサビ・ブラックメタル神楽
【一言】
ザクザクスラッシーに切り込む邪悪なオールドスクール/寒々しくメロディアスかつ攻撃的な90年代初期ノルウェイジャンブラックメタルをベースに、雅楽のような華やかな和風の旋律・ピーヒャラヒョロロと縁日じみた笛や桜舞い散る趣のある音色の琴・三味線(?)などの伝統芸能サウンドを大胆に導入。凶音で提示されたアプローチを究極まで研ぎ澄ました個性的過ぎるサウンド。ずばり、ブラックメタル陰陽座
【二言】
何が凄いって、ブラックメタルが本来持つ深遠かつ荘厳なミステリックさに、神道的世界観独特の神秘的・呪術的妖しさをものの見事に溶け込ませ融和し親和させていること。それはあからさまな笛などに限らず、細かなギターリフ・トレモロアルペジオの一つ一つまでことごとく「和琴かはたまた三味線か」というような和音階の雅なフレーズを奏でていながら、ブラックメタルとして全くチグハグな違和感がないという尋常じゃない完成度の高さ。
【三言】
もちろんヴォーカル・コーラスワークに至るまでその世界観は徹底されている。ヴォーカルはヒステリックな高音交じりのハスキーなガナリデスであり、邪悪でかっこよし。朗々と祝詞・呪を読み上げるようなローテンションの男声ノーマルヴォイス、華やかに舞いでも待っているかのような女声コーラス(どちらもモチ日本語)などの導入の仕方が絶妙。ヴォーカルワーク含め、ドラマティックで多少プログレッシブなな楽曲展開や演出の巧さは匠の域だ。
【蛇足】
すげぇ。
とんでもない作品がリリースされました。驚愕を禁じ得ません。
まさに正しい意味でジャパニーズペイガン、まごうことなき究極の国産ブラックメタル
北欧で言うところのペイガンブラックメタルの民謡を取り入れる手法を純和風解釈で踏襲したと言える。
同系統として語られるであろう陰陽座と比較すると、こちらのほうがよりシリアスであり、儀式的な雰囲気が強く神々と一体化・交信せんとするかのようなトリップ感がある。
多くの国産ブラックメタルバンドが他国のスタイルに比喩されて語られる中で、日本古来の文化に対する誇りと信仰に根差して日本にしかなしえないブラックメタルを、それもここまで徹底された世界観で築き上げたという事実は看過されるべきではないだろう。
暴虐のブラックメタルそれ自体がかっこいい上に、乱舞する神楽サウンドのかっこよさったらない。
荒々しく暴れるところでは暴れ、テンポダウンして聴かせるところはじっくりしっぽり力場を練り上げる。
陰陽・緩急をつけることで豊富な展開が楽しめる。
非常にメロディアスかつキャッチーだが、緊張感が張り詰めており軟弱な甘さは全くない。
日本人より、むしろ外人受けしそうなエスニックさ。
国産ブラック好きは言うに及ばず、SSORCArkha Svaと比肩する世界照準のクオリティを持った作品、アテテュードを持ったバンドなので、大和民族の全ブラックメタラーなら聴いておかねばならない国産ブラックの歴史的大名盤。
当ブログでは最上級必聴指定とさせていただきます。
ああ、ライブいと見に行きたし。
【ゲキアツ】
#5[日女(Filume)]:和琴爆走猛烈にかっこいい。和製ブラックの真髄を見よ。
【傾向と対策】
凶音、初期ノルウェイジャンスタイル、陰陽座Deathscythe(和メロパート)
【オフィシャルサイト】
http://members3.jcom.home.ne.jp/oriental-tiger/
MySpace
http://www.myspace.com/misogijp