Nehëmah:[Requiem Tenebrae]


フランス産、プリミティブ/ピュアブラックメタル、2004年名盤3rd。8曲55分強。
以前紹介した1st2nd同様、Adipocere Recordsによる2009年再発盤。
このバンドのジャケはどれもブラックメタラーなら食指が反応せずにはおれないセンスしてますが、このジャケもまたド直球で素晴らしいですね。あっぱれ感服。堪りません。


不気味なインスト明けの#2[The Great Old Ones]Mutiilationを彷彿とさせるリフが飛び出し、「お?フレンチっぽくなったか?」と思ったものの、そんなことはやはり無く、相も変わらず初期ノルウェイジャンの哲学を貫く真性ブラックメタルとなっている。
怪しげで陰鬱とした雰囲気に貫録を感じさせるミドルパート、ツタツタと軽快に飛ばす疾走パート、ドカドカスココココと荒々しくファストに攻めるブラストパートを実に巧みに匠に絶妙に織り交ぜた楽曲をプレイ。
2ndまでと比べ随分とクリーンでかっちりとした音質となり、1stの頃のようなカルトな雰囲気は随分と薄れている(スネアの硬さと軽さが良い感じ)。しかしながらジュワジュワジリジリしたギターの湿度や質感はいかにも90年代初頭ブラックの匂いを漂わせており、初期ノルウェーの哲学をリスペクトしながらもモダナイズされたような印象。
何と言ってもやはり、モロあからさまにDarkthroneな、邪悪で寒々しいブラックメタルリフ/ノリノリスラッシーなオールドスクールリフほんのり哀しげでメロウなトレモロミスティックな妖艶さ漂う悲しげな叙情アルペジオなど、禍々しく荒涼としていながらも口ずさめそうなほどメロディアスなリフ捌きは天下一品の素晴らしさ。暗黒を湛えたベースラインもこれまたメロディアスに聴かせる。
さらに初期Emperorを思わせるひんやりと冷たい神秘的かつ深遠・荘厳なアトモスフェリックKeyや、しっとりした叙情味あふれる妖しくも悲しげなアコギを随所に配置することで、邪悪で妖艶な魔性の雰囲気が十二分に味わえる
またヴォーカルも相変わらず凶悪であり、常人ならすぐに血反吐を吐いてしまいそうな喉の酷使っぷりが最高クール。ガラガラのガナリ声から凄絶な絶叫まで邪悪極まりない。#8[Through the Dark Nebula]ではMeyhna'ch閣下を思わせるネチっこい呻きガナリやIhsahn御大のような朗々としたクリーンヴォイスも披露し、楽曲のドラマ性を盛りたてている。
そしてそれらをまとめあげる作曲センスの高さこそ、このNehemahが凡庸のブラックメタルバンドとは一線を画す肝たる要因。ファスト・スローそれぞれのパートに魅力があり、なおかつそれらの絡め方も絶妙であり、10分前後の曲でも飽きることなくサラッっと(いや、ジックリとか?)聴かせてしまうあたりはさすがと言えよう。
正直アルバム通しての体感時間は40分弱かな?ぐらいに感じ、気がつけば一枚聴き終えているような充足っぷり。


というわけで、1st・2nd同様ブラックメタル屈指の名盤たる一枚。
一般的な意味で、完成度は今作が最も高いと言えるかも。洗練されているというか、音質も含め非常に聴きやすい内容となっている。この作品に比べると、1st2ndは幾分マニア向けというか、通好みな作風だと感じる。
どの曲も甲乙つけがたいほど素晴らしく、これをして捨て曲無しと言わずして何が捨て曲無しかと言いたいほど捨て曲がない(クドい)。
このバンドはとかくカルト・プリミティブとして語られることが多いが、初期ノルウェー勢同様にもっと広い視野で語られるべきだと思います。
それすなわちブラックメタラー必聴と言うこと。
もし持っていなければ、入手がたやすい今のうちに是非購入されることを強く熱くオススメします。
Super Excellent!!!


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