Dekadent Aesthetix:[Dekadent Aesthetix]
Joylessとスプリットもリリースしているルーマニア産、アヴァンギャルドブラックメタル、2009年1st。
11曲53分弱。
うーん、これまた面白いキワモノバンドが登場しましたねぇ。
Lifeloverのような都会的ディプレッシブロック/ブラックメタル、Joylessのようなサイケデリックロック、Amesoeurs・ひいてはThe Cureをも彷彿とさせるポストパンク風ブラックをゴチャ混ぜにしたような極めてアヴァンギャルドで個性的な変態ブラックメタル?が惜しげもなくテンコ盛りとなっている。
ジクジクとしたリストカットリフ、シューゲ系に通ずるような儚く切なげな明るめトレモロ、温かみのある/サイケデリックな浮遊感漂うクリーントーンのアルペジオ、モダンなデスメタル/ハードコアのようなザクザク/ドロドロ轟音ヘヴィリフ、緊張感のあるブラック然りとしたトレモロ/リフ、微妙に爽やかパンクっぽいいリフ、アンビエントなKey、温かみのある優しげで切ないアコギ、物悲しげに弾かれるピアノ、ギィギィと不気味に下手なヴァイオリン、などなど、とにかく雑多な要素が奇々怪々と絡み合っている。
基本ロック調ミドルテンポ〜軽快なアップテンポ。リフレインを多用して単調に進行していく曲(#4[17]、#7[Ziua In Care Decizi Sa-Ti Cumperi O Arma])もあれば、時にグラインディングなパートも挟みながらプログレッシブかつカオティックに進行する曲(#8[Incantatie]、#10[Whore Rifflefuck])まで様々。
楽曲によってその体裁は異なるものの、気だるく物憂げなメランコリーと倒錯的なサイケデリアはアルバム全編に共通している。
とにかく心に響くメロディ捌きと、様々なエフェクトを絶妙に駆使して千変万化の表情を見せてくれるギターサウンドが実に面白く、楽曲世界にグイグイと引き込まれる。インダストリアル/エレクトロニカなアプローチや初期Lifeloverを思わせる魑魅魍魎のSEの類も効果的に用いられており、混沌とした要素を巧妙にして絶妙にまとめ上げる作曲センスの高さは驚異的ですらある。
また音楽性と同様ヴォーカルワークも多彩であり、高音でギャァギャァと邪悪にガナリ立てる発狂デスヴォイスから、妖しげな脱力系ノーマルヴォイス、ウゴウゴグロウル、Audrey Sylvain嬢(Amesoeurs、Alcest)に通ずるアンニュイな色気漂う女声、語りかけるようなセリフ調、など表現力に富んでいる。
というわけで、知性と個性と憂鬱と倦怠と狂気と陶酔と恍惚と薬物と拳銃とそれからええと何だまぁとにかく色々ゴッタ煮された中毒性の高い生粋の変態ブラックメタルがズップリドップリ堪能できる一枚。
どの曲も全てツブ揃いであり、アンニュイな雰囲気にしんみりと癒されたかと思えば息つく暇もないくらい目まぐるしく荒れ狂うスリリングな楽曲にトリップしたりと、見事にずぎゅーんとヤラレテしまった次第。
徹頭徹尾変態でありながら、ブラックメタルパートが鬼かっこいい点が最高に痺れる。
とくに涙腺刺激のポストブラック#2[Plethora]、アンニュイなサイケサウンドと重厚ヘヴィネスの化学反応がたまらない#3[Suicide Hobby]、切なさで胸がいっぱいになる#5[Track 0]、スリリングにヒステリックに荒れ狂う#8、#10あたりがお気に入り。
前述のように、Lifelover、Amesoeurs、Joylessを筆頭に、頭のネジがちょっとぶっ飛んでる変わり種ブラックメタルが好きならばぜひ聴いてほしい逸材。
オススメ!!