Калевала:[Кукушкины дети]


ロシア産、スラヴォニック舞踏派フォークメタル、2009年2nd
通常版とはジャケが異なる1000枚限定DIGIブック仕様。画像左が限定版、右が通常版。限定版には2009年シングルの[Kolokolchick]がボーナストラックとして収録されている。ビデオクリップも入っているが、悲しいかな僕のPCはなぜかエンハンストCDを受け付けないのでいまだ未視聴。
バンド名とタイトルは英訳するとKalevala[The Cuckoo's Children]
前作は東欧の湿り気漂う異国情緒的哀愁アコーディオンとぶっ飛んで陽気な楽曲が素晴らしい作品でしたが、今作でもそのKalevalaとでも呼ぶべき作風は貫かれており、さらにメロディの破壊力に磨きをかけて大幅にパワーアップを遂げた悶絶舞踏派フォークメタルが楽しめる


どっしりと腰を落ち着けた横乗りミドルから軽快に跳ねる痛快裏打ち2ビートまで安定感のある心地よいドラムフォークメタルらしい民謡アレンジのダンサブルなフレーズやザクザクズンズンギュ〜ンとソリッドなプレイで魅せるギタービコビコと重厚にビートを刻み時に旋律も奏でるベースらが、メタル・ロックの魂を失っていない力強いサウンドを作り上げ、その上でアコーディオンメタラー悶死確実の凄まじい殺傷力を誇るアコーディオンがこれでもかとフォークロアな極上牧歌メロを炸裂させ、千変万化の表情を見せる村一番の踊り子ヴォーカルKseniyaがその卓越した歌唱力でエスニックな色気を振りまきながら魅惑的に乱舞する
何よりも特筆すべきはそのKseniyaの歌唱力。女性らしい柔らかさを持ちながらも芯が強くしなやかで艶のある声色で、時にはつらつと若々しく、時にキリリと力強く、時にしっとりと物憂げに、時に儚く切なげにと、タップリ感情を込めて歌い上げる様に胸がキュンキュンするw。それらのスイッチングも実に見事であり、その表現力の高さは天井知らず。アップテンポのダンスチューンからバトルチューン、しっとりしたバラードまで幅広い楽曲のもつ叙情的な色合いの舵取りを見事にこなしている。
また主旋律を担うアコーディオンの異国情緒あふれる民謡メロディがマジで素晴らしいことこの上ない点も強烈なアピールポイント。Kseniyaの優れた表現力と相まって、目を閉じるとまるで、畑を耕しながら職人歌を歌う農民、焚き火を囲んだ農村の五穀豊饒の祭り、石畳の通りで開かれる賑やかな朝の市場、暖炉のそばで揺り椅子に腰かけ編み物をするおばあさんとそのおばあさんの語るおとぎ話を楽しげに聴く子供、はたまた夕暮れとなり一時の休息を得る戦士、目に涙を溜めながら彼らの帰りを待つ妻たち、etc.etc.といった情景が広がるような、妄想系メタラー垂涎の強烈なイメージ喚起力を持っている。
しっとり叙情を紡ぐ哀愁アコギや笛、時にかっこいいヘヴィメタルなソロなどを挟むギター、フォークメタラーにはお馴染みのあのビョンビョン(楽器の名前忘れた)、掛け声なども楽曲を盛り上げる。
音質も申し分なく、ズッシリした重厚さと洗練されたバランス感覚を持った国内盤クオリティの音作り。アコーディオンが前に出まくっててナイス。


というわけで、前作が好きだった人、ロシアンフォークが好きな人、KorpiklaaniFinntrollなどの歌って踊れるお祭りフォークが好きな人、アコーディオンフェチな人、みんなまとめて迷わず必聴の一枚
なんといってもKseniyaの圧倒的な存在感。そして「わかってる」アコーディオン使いのセンスの良さ。
ほぼどの曲にもアコーディオンとギターのダブル必殺決めフレーズが標準装備されており、アルバム通して甲乙つけがたいほど魅力的な楽曲でびっしり。
個人的趣味で言わせてもらえば、#1〜#3の流れが神がかっている。
#1[Kalevala]と題された通りまさにKalevalaの陽気なお祭りチューン。
タイトルトラックである#2[The Cuckoo's Children]は、どこぞのメロスピクサメタルみたいな明るくも悲愴的な決意が感じられるクッサクサのサビの歌メロ、およびKseniyaに、恥ずかしながらガチ泣きしてしまったw(しかも初聴から一週間くらいは聴く度に涙をこらえるレベルの殺傷力)。中間パートのギターソロに続くアコーディオンソロにも100点満点あげたい。これぞ僕が探し求めるアコーディオン。この曲だけで100万回死んだ猫。
#3[Handfuls of Thawed Snow]は、凱旋MARCHかはたまたスクールウォーズかといった汗臭い熱血青春メロ「オイオイオイオイ!」の掛け声、決死の形相でニェムニェム歌う(笑)Kseniyaなどがたまらない。
凄まじい辺境的哀愁を振りまくヴォーカルワークが素晴らし過ぎる#6[By the Broken Bathtub of the Solitary Porch]も激ツボ。
これを聴かずにフォークメタルを語るな!!と自信満々に大見得を切れる痛快な大傑作。
しかしほんとここのところのロシアンフォークの充実感、安心感たらないですね。
早くSvartbyも手に入れなければ・・・!!!
ロシアいいよロシア(*´Д`)


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なお、ボートラ#11は明るくも物悲しげなアコギと切なげなヴォーカル、アコーディオンなどによるしっとりしたバラードであり、これはこれでかなりグッとくる良曲だが、お祭りフォークサウンドが聴きたい人は躍起になって限定版を購入する必要は無いかな。