Klabautamann:[Merkur]


ドイツ産、変態プログレッシブ/アヴァンギャルド・アコースティックブラックメタル、2009年3rd。9曲49分弱。
邪悪絵本のワンカットのようなシュール・不思議ジャケが目を惹きますね。前作までのフォレストフルで土臭いジャケとは趣が異なり、垢ぬけたというかなんというか。
しかしながら中身は相も変わらず、むしろKlabautamannの持つ個性が更に強調され、フォーク+ポストロック+プログレデス/ポストブラックといった構図がより顕著かつ明確になった最高峰の個性派ブラックメタルが堪能できる。


ゆったりスロー〜オシャレロック調ミドルからガチャガチャブラスト爆走まで目まぐるしく展開するダイナミックかつプログレッシブなドラムダーク・ミステリアスな雰囲気の個性的なメロディックリフメロウ極まるトレモロ/ポストブラック的激情トレモロ/攻撃的な刻みor痙攣リフなどによるネガティブなポストブラックメタルサウンドをベースに、しんみりと物寂しげな叙情を孕んだ優しげかつ柔らかなアコギによるロマンティックかつノスタルジックな癒し系フォークサウンド幻想的なクリーントーンによって淡く美しい情景を描き出すポストロックサウンドとが激しく入り乱れ、その上で喉に痰が絡んでいるかのような水っぽさのあるネチっこく凶悪な濁声ガナリが諸行無常に吐き捨てる。曲によってはピアノ、笛なども登場する。
前作までと同様の、KralliceJanvsFenをごちゃ混ぜにしたようなスタイルが貫かれているが、ジャジーなパートや綺麗なポストロックの増量など、瑞々しいオシャレ要素が一層幅を利かせているように感じる。反面、アコギが減少したため、フォークブラックっぽさは減退し、よりプログレッシブさが際立っている
とはいえ、一つ一つのフレーズが非常に鮮烈なインパクトを持つのはこれまで同様、なおかつこれまで以上に静と動をあざといほどハッキリと対比しながら目まぐるしく展開していくため、叙情性豊かな作品世界にグイグイ引き込まれ、息つく暇もなく緊張感を保ちながら最後まで聴き通してしまう
ヴォーカルもブラックメタル的ガナリから語りかけるようなノーマルヴォイス、フェロモン溢れるマターリテノールなど楽曲に合わせるように多種用いられており、表現力豊か。


というわけで、印象的なフレーズを絶えず紡ぎ出す感性、雑多な要素を混沌と紙一重にまとめあげる知性に富み、優れたセンスと高い技巧によって裏付けられた素晴らしい作品。
孤高かつ高品質。そのオリジナリティは他の追随を許さないまでに圧倒的。そしてそのために、中毒性の高さはピカイチ。
あくまで「ヘヴィメタルサブジャンル」としてのデス/ブラックメタルが持つ攻撃性や暗黒性をわかりやすく表現する一方で、アコースティックな温もりや、オシャレ・ムーディな色気、ポストロック的癒しと激情などが錯綜する。水と油ほどに性質の違うものを水と油のままに混ぜ込み練り上げられる唯一無二のマーブル模様のドラマ性は、しかし全く散漫ではなく、作品としての完成度は恐ろしく高いときてるからタダモノではない。
前作までが好みならもちろん、前述したKralliceJanvsFenなどの新世代ブラックや、Opethなどのプログレデスが好きな人、および他とは一線を画す個性的なブラックメタルが好きな人はマストバイ。
Great!!


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