Dyster:[Fallen, Suicided & Forgotten]


フランス産、Nokturnによる独りプリミティブ/スイサイダルブラックメタル、2006年デモ。7曲41分強。
Drakkarからリリースされていたテープ音源がCD化再発されたもの。
以前から気になっていた音源だったので、East Chaos Recordsさんがセールを始めた際に、ポイントも併用してほとんどタダ同然でいただきました。
いつも儲けにもならない注文ばかりでホントすみません(汗)
東混沌さんは、経営状況が心配になるほど出血サービス尽くしの、オススメディストロです。みなさんじゃんじゃか利用しましょう(詫び代わりの宣伝)
さておき、のっけからMutiilation稀代の名曲[Transylvania]そっくりなリフ(サビじゃないパート)から始まる今作は、フレンチプリミティブファンから儚げディプレファンまで虜にしうる、一粒で二度美味しい音源となっている


アルバム前半(#1〜#3)はMutiilationド直球UGカルトプリミティブ。
適度にミドル絡めながらバタバタドチドチと疾走する、打ち込み丸出しの酷く安いマシンドラム、籠り気味かつジリジリノイジーなプリミティブギターが奏でる、フランスらしいジメっと憂鬱かつメロウなトレモロ陰鬱な狂気と壊れた叙情をまとった不吉で不穏なトレモロ/リフ霞がかったようなアルペジオなどが、カルト色濃厚な地下室ブラックメタルを作り上げ、その上で凶悪に歪んだ邪悪極まりないワレワレ唸りガナリがドロドロと怨嗟の込もった呪詛を吐き出し、悲痛凄惨極まる泣き絶叫する
鬼気迫る凄味や粘度、病的なぶっ壊れ感はさすがに本家に及ばないものの、1st〜4thまでのMutiilationの持つ独特の雰囲気が非常に良く再現されており、Mutiilationファンとしては反応せずにはいられない。機械的なビートを刻むマシンドラムのフレージングはXasthurなんかも彷彿とさせる。


特筆すべきは凄まじく邪悪凶悪なこのヴォーカル。Meyhna'ch閣下Mikko社長を足したような、グウェーギエーという苦しげな極悪低〜中音呻き・ガナリから、ねちっこく狂った絶叫、果てはBurzumリストカットブラックの中間のような悲痛な泣き叫びまで駆使しており、超一級の腕前ムチャクチャかっこいいです。


一方、12分越えの大作失恋ソング(笑)#4[Without You (Broken Heart)]以降は趣が異なり、胸が締め付けられるような心に響くハートブレーキン・トレモロ、温もるベースライン、柔らかに響くアコギによる物寂しげだが温かなアルペジオなどによる、淡く儚く切ないノスタルジーで一杯のPest Productions系ディプレ/プリミティブが展開されている。
これがまた、実に琴線に触れまくる儚げ哀メロが炸裂しており、古くはVlad Tepseに始まり、CelestiaMortifera、そして果ては現在のシューゲブラックへと通ずるような一種爽やかなノスタルジー・センチメンタリズムを感じさせ、迸るほど激しくツボ
この胸が掻き毟られ心洗われるようなノスタルジックブラックに前述した超絶品ヴォーカルが乗るんだからたまらない。


というわけで、あまり余所で紹介されているのを見かけはしないが、個人的に大プッシュしたい一枚。
Mutiilationの音源は欠かさず買っているような人は前半を楽しめるだろうし、最近の儚げディプレ系を追っかけてる人は後半で悶絶できるだろう。儚げ疾走をかます#5、#6の素晴らしさったらない。
打ち込みドラムがあまりにあまりなため、その辺で好き嫌いが分かれるかもしれないかな。それさえ克服できればかなり旨味のある作品だと思います。
カルトなテープリリースばかりの、生粋のUGバンドですが、今後CD音源がリリースされることを祈るばかり。


・Drakkar Productions