V/A:[From the Entrails to the Dirt]


フレンチカルト・プリミティブブラックメタル軍団による、2005年超強力4-wayスプリット!!
End All Lifeよりリリースの666セット限定アナログ音源がデジパックCDとして再発されたもの。
メンツがメンツなだけあり、凡百の量産型ブラックメタルバンドでは足元にも及ばない真性も神聖な鬼気迫る鬼コンピ盤となっている

Malicious Secrets

おなじみフレンチカルトの生ける伝説MutiilationMeyhna'ch閣下によるカルト・トゥルー/プリミティブブラック。3曲20分強。
旧き良き黒金に紹介されていたものの、マニアック過ぎてまず手に入んないだろうなー、と思っていたバンド。こうしてCDで音源がリリースされたのは数年越し(高校生のころから?)の念願がかなったということで、非常にうれしいです。
そのスタイルは、一言で言えば狂ったHell Militiaといったところだろうか。
低音の強調されたバキバキのドスの利いた音質が極悪な威厳と迫力を生み出し、ガチャガチャと悪意の塊のようなドス黒い暴虐リフが荒々しく叩きつけられ何を弾いているのかよくわからないヒステリックで気味の悪いキチガイ染みたソロを狂ったように掻き鳴らす、緩急をつけつつも徹底してファストかつブルータルな真性暗黒ブラック
リフのセンスが得体のしれない邪悪さというか不気味さが漂った独特のものであり、メロディの叙情性などは後回しの、闇黒デスメタルの延長線上にあるサタニックなサウンド。とはいえ、Mutiilation6thのようなメロウさや魔術的な雰囲気・壊れた叙情を感じさせるパートも微々ながらあり、耳を惹くあたりはさすが。
やはりなんといってもMeyhna'ch閣下死に損ないのネクロマンサー系呻きヴォーカルが光りまくっている。Hell Militiaで聴かれたようなあまり歪んでいないAttilaの声質で気だるげに吐き捨てる、潰れて掠れた濁声呻きなのだが、もう妖しさ爆発で不気味なことこの上ない。さらに、神経を逆撫でする首を絞められた悪魔のような不快極まりない高音喚きオッサン咆哮なども駆使し、御閣下にしかなしえない邪悪極まりない素晴らしいヴォーカルワークが堪能できる

Antaeus

フランスを代表するファスト・ブルータルブラックメタル。1曲3分ジャスト。
恥ずかしながら初聴なのですが、いやこれはかっこいい!!
ストトトと軽快な前のめりで軽いスネアとズゴゴゴという重厚なバスドラによるブラスト、モッサリした音色のギターによる意外にもメロディアスに邪悪な攻撃性を炸裂させるブルータルなリフハスキーなイーヴィルガナリ、および獣の咆哮が如きグロウルが混然一体となって暴れハッチャク!!
ファストブラックと言いながら爆走一辺倒でなく、一曲の中でしっかり緩急が付けて展開しているのでスリリングに楽しめる。Urgehalなんかに近い感覚かな。ブラック聴き始めた頃に求めていたサウンドであり、実に爽快、ある意味健全なブラックらしいブラックメタル
1曲3分は物足りない!!

Mutiilation

はい、生ける伝説、魔王Meyhna'ch閣下によるカルトプリミティブブラック。2曲11分強。
無機質に爆進するマシン剥き出しのドラムの上で、不穏な雰囲気をまとったカルトの真髄たる暗黒黒魔術リフ湿った陰鬱な叙情に満ちたメロウで病んだトレモロが掻き鳴らされ、そこに閣下の唯一無二のねちっこい呻きガナリヴォーカルがのっかる。
音質は6thを若干ノイジーにしたような、チリチリのプリミティブさは残しつつもクリアで厚みがあって分離のいいもの。ヴォーカルや楽曲に漂う雰囲気もまた然り。
1曲目はなんと稲中でおなじみ(笑)、フランク・シナトラMy Wayなる曲をカバー。原曲を知らないので比較はできませんが、4thあたりの作風を彷彿とさせる妙な爽やかさを持ったMutiilationらしい楽曲となっている。
2曲目1st収録曲の再レコ。音質が向上しているせいか、1stに漂っていた凄まじいUG感や病的な雰囲気はあまり感じられないものの、やはりいい曲。
うん、まぁこんなもんかな?(笑)

Deathspell Omega

こちらも説明不要、ブラックメタルシーンの頂点に君臨する暗黒と混沌の申し子。1曲20分弱。
名作MCD、Kenose以降の作風。
プログレッシブにテンポチェンジを挟みながらドガドガとブルータルにブラスト突進する超絶技巧の剛腕ドラム不穏でカルトな雰囲気がキツイ、メロディアスながらも差し迫った緊迫感のある暗黒リフ/トレモロ気味の悪い壊れ気味のソロフランスらしいロマンティックさをにじませる掻き鳴らしリフ、およびフランスが誇る顔射マニアMikko社長地獄の底から響いてくるかのような底なしの悪意と威厳に満ちた邪悪極まりない魔王系デスヴォイスが作り上げる、一瞬聴けばDsOと分かる完璧なまでに完成された宗教色濃厚な真性カルト/トゥルーブラックメタル
個性的なリフ捌き、計算高い混沌を作り出す作曲センス、邪悪と怨念の権化のような低音ガナリヴォーカル、低音までドスの利いた重厚かつ荘厳な音質、宗教的なクワイアなどを用いた徹底的な雰囲気作り、何から何まで完璧。1曲20分弱と大作ながら、気の休まる瞬間は一瞬たりともなく、めまぐるしく展開しながら難解さは一切皆無、暴虐の限りを尽くす至高の20分が体験できる。高いテクニックとまごう事なきブラックメタルの美学・哲学に裏付けられた圧倒的な世界観・完成度はもはや他の追随を許さない。



というわけで、カルトなフレンチブラックマニアなら押さえておいて損はないであろう一枚。
Mutiilationパートは正直周りに比べてインパクトが薄い(笑)が、前述したようにMalicious Secretsの音源は貴重だと思うので、Meyhna'ch閣下中毒の方はゲット推奨。
翻せば、フレンチカルトにそこまで思い入れのない方はスルーで問題ないかと。
個人的には、昔はさておきここ2〜3年はファスト/ブルータルと言われるとあまり、というか全く食指が反応しなかったので、Antaeusカコイイ!!と気づけたことは収穫だったかな。フルレンスも是非聴いてみたいですね。


・Antaeus Myspace
・Mutiilation Myspace
・Deathspell Omega Official Site
・Deathspell Omega