Kanashimi:[Romantic Suicide]


去年の浅草ブラックメタル祭りでそのご尊顔を拝見させていただいた(たぶん)SamayoiMisanthropyによる、静岡産独りスイサイダルブラック/フューネラルドゥームメタル、2009年1st
日本きってのカルトレーベル、Nekrokult Nihilismより666枚限定でリリース。手書きナンバリング入り。
このバンドの前身にあたるSamayoiは残念ながら未聴ですが、Xasthurの影響下にあるのであろう鬱系に物悲しいピアノを乗せた、まさにロマンティックかつスイサイダルなネガティブブラックメタルとなっている


ドッドッタンとスロー〜ミドルテンポで気ダルげに歩を進めるグルーヴィなドラム靄がかかったようなノイジーさのジュワジュワギターでゆったりと奏でられる幽玄なアルペジオ不穏な瘴気をまとった仄暗い陰鬱リフ、およびややもすれば温かくも感じられるような根暗なベースラインが、絶望感・憂鬱感・倦怠感といったネガティブな感情をない交ぜにしたディプレッシブかつメランコリックな幻想空間を構築し、そこに涙の雫が如くポロロンポロンとこぼれ落ちる、ひどく悲しく寂しく儚く、しかしどこか優しげで美しいピアノの耽美な旋律が切ない光を射しこむことで、かえってどうしようもない悲愴感・悲哀感がより一層強調され、それらの上でギターと同様に靄がかかったようなイーヴィルな高音喚きヴォーカルが悲愴感いっぱいに絶叫する。ときおり神秘的なアトモスフェリック/アンビエントKeyが控えめに用いられる。
リズム・ギターサウンド・ヴォーカルなどモロにXasthurを彷彿とさせるジメっと暗く湿った幻想的自殺ブラックメタルだが、アルバム通して悲しげかつお耽美なピアノが鳴り響いていている点が非常に個性的。これがまた実にいい具合に救済と紙一重の悲劇性を孕んだメランコリーを演出しており、見事に美しくも悲愴的・頽廃的な世界観が作り上げられている
ギターの奏でる幽玄なリフやアルペジオも切なく儚い叙情が文字通り滲み出ており、聴けば聴くほどジワジワと胸に染みいる。
また泣いているような高音交じりのブラックヴォーカルも素晴らしく、生の声でも十分凄まじくぺシミスティックなのに、深くエフェクトがかけられたことでさらにモーンフルでどうしようもない悲愴感が漂っている
音質は、前述したようにギターやヴォーカルは霞がかったような籠ったものだが、ドラムの音は抜けが良く、計算高いチープなUG感と耳当たりの良さが両立されている。


というわけで、鬱に沈み込んで癒されるにはこれ以上ないほどうってつけの悲哀と絶望に満ちた一枚
さすがはベテランというべきハイクオリティ。やはり著名な国産ブラックは海外勢に比べてもえらく質が高いですね。
ジャケットやタイトルがなんだかヴィジュアル系じみていますが、内容的にもVに通ずるゴシカルな雰囲気が感じられ、全編胸を打つ耽美な涙に濡れそぼっています。
不満点を挙げるとすれば、6曲30分弱というボリュームの少なさでしょうか。このスタイルならもっとリフレインを多用した大作路線でもいいからズブズブと沈み込む尺がほしかった。
とはいえ、スラッシュメタルの土台上に建築されてこそブラックメタル!!という硬派なブラックメタラーさんには退屈極まりない音源でしょうが、XasthurNorttをはじめとした最近流行りのディプレ/葬式ドゥームが好きな方なら必聴の一枚。
レーベル元であるNekrokult Nihilism死んでも再発しないというUGの鑑なスタイルを貫いているレーベルなので(笑)、興味のある方はお早めに。


・Official Site:ロゴがArkha Svaみたい。