Arcana Coelestia:[Le Mirage De Lideal]


イタリア産、ゴシックブラック/フューネラルドゥームメタル、2009年2nd
おそらく宗教画であろうジャケの示すとおり、絶望と悲哀に沈みこむような壮麗かつ耽美で儚い葬式ドゥームが展開されている。


スロー〜ミドルテンポでゆったりと進むドゥーミーなリズムに乗せ、聴く者を押しつぶすかのようにへヴィに歪められた破滅的なディストーションギター、それと相反するように救済の光を放つ深くリバーブのかけられた儚く美しく荘厳なクリーンギター/トレモロ星空が瞬くようなロマンチックなソロ様々な音色が重なりあい厳かに鳴り響く神秘的なアンビエントKeyが混然一体となって、荘厳かつ壮麗、耽美にして頽廃的、美しく神秘的にして神聖、しかし脆く儚く危うく悲哀の滲んだアトモスフェリックな音舞台を構築し、その上で腹の底から絶望を絞り出すような獣の如きデスヴォイスが重苦しくかつ悲愴的に慟哭するといった、メランコリック極まりない激情ゴシックブラック/フューネラルドゥーム
ヤケクソな感情を叩きつけるように鳴り響くシンバルがいい感じに荒んでいる。
物悲しげな音色のピアノなども交えて繰り出される、ロマンチックな叙情と哀切なる感情が込められたメロディが琴線に触れまくり、胸を締め付ける


ヴォーカルはゴシック/ドゥームらしい獣が如き低音デスヴォイス〜ブラック喚き咆哮。これがまた切ないメロディと重いリズムに見事にハマっており、重々しく激情を吐き出す様は激しく心を打つ
美しいクリーンヴォイスで切なげに物憂げに歌い上げるシーンや淡い男性クリーンヴォイス、Femaleオペラヴォーカルなどもあり、楽曲のドラマ性に負けないヴォーカルワークを備えている。
音質も実に素晴らしく、重苦しい圧迫感と魂を浄化する神々しさとを兼ね備えた非常に綺麗な音質。


というわけで、徹底した雰囲気作りとキラリと光るメロディが秀逸な、完成度の高い内容
重苦しい破滅的なヘヴィネス魂を救済する神々しい美の織りなす圧倒的な世界観は、聴いていてまるで宗教オペラでも見ているかのような気分にさせる
フューネラルドゥームということで基本ゆったりしたリズムで進行していくものの、多少テンポアップする展開もあり、またメロディのメランコリーがかなり強力であるため、メロディ派ブラックメタラーにはそれほどハードルが高くないように感じられる。まぁ疾走爆走ありきという人にはやはりオススメできないが。
美しいメロディを携えたゴシカルなブラックや退廃的な葬式ドゥーム系が好きな人はきっと楽しめるだろう一枚。


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