October Falls:[The Womb Of Primordial Nature]


フィンランドの実力派アコースティックブラックメタル、2008年2nd。絵本のようなデジブック仕様。
2007年EP[The Streams of the End](以下前EP)は実に素晴らしい内容で今でも愛聴している一枚であるが、今作でもその路線が踏襲されつつ、さらにメロディの殺傷力に磨きのかかった湿っぽい嘆きのブラックメタルがプレイされている。


胸を掻き毟るような儚く切ないトレモロ/短音リフ、物悲しくノスタルジックなアコギが絡み合うようにして叙情的な情景を描き出す、自然の美しさとヒトの哀しみを切々と訴えかけてくる哀愁ダダ漏れヒーゼンブラックメタル
ゆったりミドルパート、ブラスト混じりの疾走爆走パート、しっとりアコースティックパートと、静と動の対比が前EPに比べてもよりハッキリとして益々ドラマチックになった印象。
ジャージャーとノイジーでありながらどこか温かみの感じられる音質のギターが奏でる、メランコリック極まりないトレモロやムーディな高音短音リフがもう凄まじい哀愁を放っており、涙腺をこれでもかと刺激してやまない前EP#3のような深い悲しみに沈んだ美しくエモーショナルで湿度のめっぽう高いフレーズが全編に配されており、聴いていて胸が張り裂けそうになる。泣ける。
またこのバンドのもう一つの武器である、やはり湿度の高い物悲しげなアコギもその威力をいかんなく発揮しており、叙情味たっぷりに郷愁の旋律を紡いでいる
さらにギターに埋もれがちではあるがベースも何気にメロディアスであり、それらが幾重にも折り重なったメロディの応酬に、細かいことですぐに落ち込む僕チンのガラスのハートは完膚なきまでに打ちのめされる


ヴォーカルは掠れ気味低音ガナリデス/咆哮。かつては自らを育んでくれた母なる大自然厚顔無恥に食い荒らす驕り高ぶった人間に憤怒しながらも結局自分の森をメタメタにされてしまった山の神様のような、絶望と慟哭の入り混じった非常に感傷的なナイスデスボイス。楽曲の醸し出すどうしようもない悲壮感に見事マッチしている。


というわけで、全4曲40分弱、寂しく、切なく哀しく、しかしひたすらに美しい涙腺決壊系晩秋ブラックメタル
物悲しげに濡れたアコースティックパートも素晴らしいが、胸の底に積もり積もった悲哀の感情が津波のように押し寄せる疾走爆走パートの煽情力はもはや向かうところ敵なしといった様相を呈している。とくに#2は冒頭を聴いた瞬間「やられたッツ!!」と頭を抱えるくらいにツボってしまった次第。前EP#3Agalloch3rd#2と並んでふとした瞬間に聴きたくなるヒーゼンブラックの名曲の一つだと認識している
また叙情味たっぷりに憂鬱を紡ぎだすアコギの裏ではたいてい狼が遠吠えしていたりして、とにかく寂しさ、諸行無常の切なさが際立っている。
前EPが気に入った人はもちろん、AgallochFenなどアコースティックな感性を強く打ち出した邪悪さの希薄なブラックメタルや泣けるブラックが好きな人やにはぜひとも聴いていただきたい、「酒でも飲まなきゃやってらんねぇよ!!」な一枚。
感動した!!


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