Hurusoma:[Sombre Iconoclasm]


90年代に活動していた、Woodsによる一人ジャパニーズ・カルトプリミティブブラック。98年の1stに6曲追加して2006年にリリースされたコンピレーションアルバム
おそらく本格的な日本ブラックとしては初期の部類に属されるであろうこのバンド、昨今の日本ブラックブームに乗っかってさえいればまず間違いなくシーンの頂点に君臨していただろうと思わせるだけの質の高さと本気さを感じさせる。
ベクトルは違うが質としてはArkha Svaクラスといっても過言ではない、素晴らしい内容。


ザクザクとした切れ味とダーティな疾走感溢れる、スラッシュメタルの影響が色濃い90年代初頭系ノルウェイジャンスタイルのプリミティブ。
ガチャガチャシャーシャーやかましいが楽器の分離は良いという適度に荒い音質、ワレワレで邪悪極まりないガナリ/絶叫、そしてあくまでスラッシュの攻撃性とブラックの怪しげなオカルト感を損なわないまま、目を見張るほどにキャッチーでメロディアスな暗黒リフ/トレモロ
もろにMayhem1stBurzum1stDarkthrone2ndあたりを彷彿とさせ、さらにVenomMotorheadに通ずる汚らしい疾走感を強調したような荒々しい作風。
これがもうむちゃんこカッコイイのである!(古き良き奇怪音風)


とくにギターリフはもろに前述した3バンドを彷彿とさせるメロディアスなものだが、さらにキャッチーさとおどろおどろしさが強調されており、何気に個性的。メロディアスと言ってもTaakeSatyriconといったトゥルー勢のような神秘性と荘厳美を讃えたメロディというわけでもなく、地下で蠢く魑魅魍魎の怨嗟が吹雪のように吹きすさぶ、奇怪でおどろおどろしくもカミソリのように鋭利なメロディアスさ
そしてリフの良さもさることながら、ノイジーかつオールドスクールな疾走、とくに一度タメたあとの全悪魔軍総攻撃のような突進パートなど緩急を絶妙に配したリズム面はもはや匠の域。狂ったように打ち鳴らされる金物もいい感じ。
ベースも要所要所で自己主張をしているし、アコギを用いた静寂パートなどもあり、作りこみも十分。気持ち悪いソロや古臭いソロなども一部聴かれる。


またヴォーカルワークも非常に素晴らしく、Goatmoonのように歪められた狂った絶叫、ガリガリのガナリ声、お経を詠んでいるかのような独特の呪詛ヴォイス、かすれ気味の不気味な呻き声など、多彩な表現力で邪悪な怨念を発しており、かっこいいことこの上ない。


というわけで、黙ってれば日本産とは絶対にわからないプリミティブブラックの名盤
スラッシュメタルをちゃんと経由した人間が作っているなという印象で、メタリックなかっこよさがアルバム全編に感じられる
音的な部分も素晴らしいが、なにより滲み出る妖気というかオーラが凡庸なブラックとは桁が違う。やはりこの点はブラックを語る上では非常に重要だ。
ひゅ〜どろどろどろ、というもうまんまお化け屋敷なSEや吹雪のSEなども用いられており、そうした演出も徹底されている。
どの曲も素晴らしいが、とくに#2[Shade of Soul]#3[The Call from Wood]#5[Grudge - from the Black Forest -]#7[Storm]#12[Thunderbolt]あたりは、もうどないやーってくらいかっこいい。また#6[Darkness And Evil ]はSabbatのカバーであり、これもまたいとかっこよし。
極めつけは#11[Storm]のライブ音源。なんと恐山でレコーディングされたとクレジットされており、なるほどたしかにこの曲には得体の知れない圧倒的な妖気が充満している(@恐山というのは後から知ったんで、プラシーボではないはず)。
お世辞抜きで世界レベルの逸材であり、この音源がこの日本で10年以上前に制作されていたという事実には驚愕を覚える。まさに早すぎた天才。
汚く荒い音と演奏、痺れるほどかっこいいリフ、滲み出るカルトなUG感、やけくそな疾走感、そして狂気じみたヴォーカルと、あまりのかっこよさにもうメロンメロンにされてしまった次第。
すべてのブラックメタラー最敬礼もんの一枚。
手に入るうちにぜひ購入を!!


・Sabbathid Records(Label):解散が惜しまれる。