Klabautamann:「Der Ort」


独逸産、12弦ギターという変態楽器を駆使する母なる大地系アコースティク/プログレッシブブラックメタル、2005年2nd
このクラブ秋(個人経営の居酒屋みたい)、フォークブラックがそれなりに評価されている今にあって尚、かなり独特の音を出しており、むしろ昨今のアヴァンギャルドブラックのムーブメント内で語られてもいいような個性的なバンド。
しかしながら、ただの変わりダネというだけでは片付けられない知性とセンスを感じさせる素晴らしいバンドだ。


しっとりと憂いをまとった美しく叙情的なアコギが絡む変態ヒーゼンブラックメタル。ピアノや原始的な太鼓なんかも要所要所で用いられている。系統としてはAgallochOctober Fallsと同路線だが、そのどちらも割とゆったりまったりした曲調であるのに対し、このKlabautamannは突き抜けてアグレッシブ。むしろFenの淡々さを無くしておもっくそグラマラスにしたような雰囲気か。落ち着いたアコースティックパートから暴走ブラックパート、そしてそれらの両立した悶絶フォークブラックまでコロコロと表情を変える忙しない曲調で、かなりプログレッシブな感覚が強いが、チグハグなようでいて非常にきれいにまとめられているあたり知的というか、ハイセンスかつアーティスティック
終始大フィーチャーされているアコギの紡ぎだす繊細で物憂げな郷愁メロが素晴らしく、ほのかな温かみを感じさせる癒し系メランコリーがスキモノにはもうたまんない
根幹をなすブラックメタル部分は割とまっとうなノルウェイジャン系の香りを漂わせており、荘厳・ヒステリックかつシリアス。また耳を惹くトレモロなど独特のミステリアスさも多分に含んでおり、浮き沈みの激しいドラスティックな曲展開とあいまって息つく暇のない緊張感を醸し出している。


ヴォーカルは邪悪なハスキー系ガナリ声。Agallochに似てるかな。掠れ気味のEvilブラッキーヴォイスがいとかっこよし。
朗々としたクリーンヴォイスの合唱コーラスが時折用いられており、これが実にいい味を出している。
#8ではデスヴォイスは一切なく、芯の強い女性ヴォーカルが可憐な美声を響かせている。この曲はKlabautamannっぽさも備えつつ他の曲とはちょっと雰囲気が異なり、今作のハイライトともいうべき曲。この曲ちょっとポストロックっぽいし、かなり好きだわ。#2なんかもたいへん素晴らしい。


音質は、ブラックメタルらしいノイジーさも持ち合わせつつ、バンドのアコースティックな持ち味を損なわないメリハリの効いた音。メロディアスなベースなど低音までしっかり聞こえるコシがある。ドラムの音イイよね。アコギも。繊細かつ美麗かつ耳障り。素敵。


というわけで、素晴らしく洗練された芸術的アコースティック/プログレッシブブラックメタル
森の湿り気、土の匂いなんかを感じさせる郷愁土着アコギ邪悪な攻撃性をまき散らすブラックメタルとが激しくせめぎ合い、そしてそれらの融合された独特の非北欧系フォークブラックはお見事というほかない
難解ではないが変態ではある。一音も無駄のないハイセンスなアヴァンギャルドブラックメタルだ。
前述したとおり、AgallochOctober Fallsなどアコースティックな感性を強く打ち出したブラックや、Fenのようなプログレッシブなブラックが好きなら絶対ハマるであろうと思われる。
そうした自然派ブラックや変わり者が好きな人にはぜひとも体験していただきたい一枚。Great!!


・Official Klabautamann homepage
・Klabautamann@MySpace.com#2:Forlorn Seaが聴ける