Jesu:「Silver」


天才Justin K. Broadrickが、Napalm DeathGodfleshなどを経て辿り着いたJesuの2006年EPDaymare Recordsからの日本盤。
前作で図太く響く轟音ドローンと光彩あふれるヒーリングサウンドを見事なまでに融合し、独自の世界観を提示したJesuだが、ここにきてその唯一無二の才能が完全に開花、独創的かつ美しさと儚さの満ちた、奇跡ともいうべき“Jesuサウンド”が完成されている


息苦しいほどに圧倒的な質量の低音ドローンの上で繊細かつきらびやか、清澄感あふれる恍惚のメロディが清らかに流れるエレクトロニカアンビエントシューゲイザー
前作で聞かれた圧殺的なへヴィネスの比重がずいぶんと軽くなり、そのかわりによりポップさを増したノスタルジックかつ神々しいアコースティック/エレクトロニカサウンドが溢れんばかりに空間を埋め尽くしており、全編まばゆいばかりの光に満ち満ちている紡ぎだされるメロディには多幸感と郷愁の念が高密度に凝縮されており、非常に感傷的、そして神秘的。悲しく、美しく、荘厳なKeyの音色が天上世界への道標となり、行き着く先は忘我の極み。
ドラムマシンにより延々と反復されるゆったりしたリズムがどこか寂しげ、ひきずる様に重苦しく響く鈍重ギター/ベースは影を潜めたとはいえ十分轟音レベルの存在感。
そしてそれらに覆いかぶさるように響き渡る、透明感あふれるみずみずしいハーモニー。ひたすらに温かく、柔らかく、しかし確かに憂いの滲んだ美声が幻想的に浮遊するその様は、さながら天使の溜息か。


包み込むような慈愛とノスタルジーに満ちた#1#3はまさにJesuらしい恍惚サウンド。そしてその世界観を跳ねるようなアップテンポにのせた#2はまさに新天地ともいうべき音楽性。
また、日本盤にはボーナストラックとして#1#3の別ミックスが収録されている。こちらはよりアンビエントエレクトロニカ色濃厚で非常に気持ちよく浸ることができる。


というわけで、とんでもない完成度を誇るアーティスティックな歴史的大傑作
ゴリゴリに歪んだドゥーミーなギター/ベースと、神々しく繊細なエレクトロニカ/シューゲイズサウンドとが描き出す独創的サウンドスケープは、もはやどんな言葉を用いても語りつくせない至高の領域。
これぞまさに「世界一へヴィなポップミュージック」。発散される幸福感と、その根底にある大いなる悲しみとのコントラストがたまらない。
Alcestのような温かみのある音楽性が好きならはツボにハマるかも。
やはり単調でゆったりしているため、その手の方向に慣れている人でないとつらいかもしれないが、食わず嫌いしていたんではあまりにももったいない。多くの人にぜひ聞いていただきたい素晴らしい一枚。
この作品に出会えて本当によかったと心の底から思う。


・Jesu @ Myspace
・Justin K. Broadrick