Jesu:「Jesu」


「俺は世界で最もへヴィなポップ・ミュージックを鳴らしたい」
UK産インダストリアル/アンビエント・ポストロック/シューゲイザー、2005年1stXasthurWolves in the Throne Roomの国内盤で知られるDaymare Recordingsよりリリースされた国内盤変則デジパックWolvws〜みたいな)。
Napalm DeathGodfleshの天才Justin K. Broadrickが全世界に向けて解き放つ渾身の一枚。


フューネラル・ドゥームのように重苦しく響く地獄の低音ドローンと、天上から降り注ぐ福音が如き清らかな美旋律によって紡ぎあげられる、アンビエントな趣のある重厚ポストロック。Sunn O)))The American Dollarを被せたようなイメージか。
空間が歪んでいるかのような圧倒的な鈍重へヴィネスの上で、神々しく柔らかな輝きを放つポストロック/シューゲイズ的ギター/Keyフレーズが神秘的にたゆたう、互いに背反する二つの音色が溶け合うようにして創造されるその音像は広大なサウンドスケープを感じさせ、聴く者を言い知れない恍惚へと誘う。
無気力に吐き出される幽玄なヴォーカルはどこか儚げで、憂いと諦念に冷え切った心情を垂れ流している。不思議な雰囲気を醸し出す覇気のないクリーンヴォイスが楽曲とシンクロして浮遊感を増している。


後の作品に比べより破壊的・絶望的なへヴィネスに重きが置かれており、メタル/ハードコア的リフ捌きも伺える。しかしだからこそ、不安を煽るような圧迫感の中で救いの如く差しのべられた光と慈愛に満ちた繊細なメロディがまるで曇天の雲間から差し込む一筋の光のようであり、まばゆいばかりの神々しさが一層際立っている


というわけで、恍惚に浸れる至幸の8曲74分。轟音美メロの一つの形が提示されている。
フューネラル・ドゥームとアンビエントと癒しのシューゲイザーが同居しているような重厚かつ透明感あふれる美しいサウンドは、単調で緩やかではあるが聴き始めたら一時も耳を離せない魔性の魅力を内包している
この作品以降Jesuはよりシューゲイズ路線へ傾倒していくこととなるが、この時点ではまだへヴィな感性が幅を利かせておりかなりの轟音音源となっているため、ドゥーム好きには取っ付きやすいんじゃないかなと思う。このドゥーミーなグルーヴ感と神々しい音色の共演はハマると病みつきになる。
全世界で絶賛されるのも納得の素晴らしい音源なので多くの人に体験していただきたい一枚。


・Jesu @ Myspace
・Justin K. Broadrick
ちなみに、国内盤には2曲入りのボーナスディスクが付いており、そちらも轟音アンビエントな素晴らしい音源なので、買うならぜひ国内盤で。