Vitsaus:「Jati Vihassa ja Kunniassa」


Hornaのメンバーが在籍するフィンランド産プリミティブ・ブラックメタル。2003、2004年にセルフリリースされた3本のデモ「Ajan ja Ihmisen Haudoilla」「Pappisviha」「Halveksuen ja Hapaisten」をまとめた2枚組ディスコグラフィー盤。2004年リリース。
気合入りまくったメンバーショットはかっこいいを通り越して正直気持ち悪いです(笑)


除情味あふれるメロウで寒々しいトレモロ、怒涛のブラスト、ザクザク剃刀リフにオールドスクールなノリ、ギャアギャアテンション高く喚き散らすEvilヴォーカルと、これぞフィニッシュ・プリミティブ!!と言いたくなる音楽性。特筆すべきはそのテンションの高さ。ファストブラックもかくやという勢いで猛然と突進する攻撃的なスタイル。
Satanic Warmaster2ndをガチャガチャやかましくしたような感じで、ほぼブラストしっぱなしではあるもののツタツタドタドタと軽快な疾走やスラッシュ展開なども交え適度に緩急がついており、またピンと張りつめたような緊張感のあるメロディが常に掻き鳴らされているため、総じて長めの楽曲も全くダレることなく美味しく聴きとおすことができる。


ザクザク刻むリフにせよメロディを奏でるトレモロにせよとかくメロディにインパクトがあり、特に嘆くような情緒感のあるトレモロは極上で、ペイガン臭こそないがGoatmoonNazgulなどにも通ずる哀愁と悲壮感が漂っており、その殺傷力は絶大。


ヴォーカルも鬼気迫るものがあり、血管がブチ切れんほどの凄まじいテンションで終始叫びっぱなしDisc2では多少エフェクトもかけられており、ギャアギャアとやかましく実に寒々しい凄絶スクリームが堪能できる。メロウなメロディと重なるとこれがまたなかなかに切なく、泣いてこそいないものの激しい嘆きの念が感じられベリーナイスDisc2:#6以降はいかにもプリミティブなEvilガナリ声であり、これも非常に素敵。


音質は当然悪い。ドカドカ荒々しいドラムとギャリギャリに歪んだノイジー極まりないギターがやかましいRawサウンド。ジャーッというハーシュノイズがエライことになっており、車の中でラジオでも聴いているかのようなシャリシャリ感。しかし低音もある程度しっかりしており薄っぺらさはあまり感じない。
とくにDisc2の方が劣悪で、ドラムは軽く、ジリジリとしたギターがかなり耳障り。#1〜#5の微妙にポンコツなスネアとギターの高音がツボ。#6以降は籠り気味。


Disc1:#3は泣きまくりのメロディが非常に切なく、胸が掻きむしられるような感覚。これは名曲。
Disc2:#2#4#7#9あたりはメロウ疾走マニア感涙のキラーチューン。#5Nargarothみたいにジワジワくる泣きナンバー。オールドスクールかつメロウな#6#8もかっこいい。
ブルータルといえるほど突進第一な印象のDisc1に対して、Disc2オールドスクール・疾走メインに起伏がはっきりとしており、またメロウさも際立っているため自分好み。


メロウで寒々しく邪悪で荒々しい。触れるものすべてを切り裂くような切れ味鋭い猪突猛進フィニッシュ・プリミティブ・ブラックメタル。あまり個性的ではないが、プリミティブ・ブラックとしてひとつの理想的なスタイルを体現しているといえる
轟々と吹きすさぶ音の嵐のなかにくっきりと浮かび上がる除情味あふれる切ないフレーズが耳を惹き、とくに爽快な疾走感とどうしようもないほどのメロウさが調和したDisc2にいたっては素晴らしいの一言。
Satanic Warmasterに代表されるフィンランドのメロウ・プリミティブ勢が好きなら文句なしで気に入るだろう。
110分弱というボリュームながら普通のアルバムとほとんど値段変わらないし、内容も極めて高品質なため、未聴の人は黙って買っとけってな快作。ずばりオススメ。


・Hammer of Hate(Labels)Disc1:#3Disc2:#2が聴ける。
余談だが、こーゆータイプの2枚組はCDがやたら固くケースにハマっていて、取り出すときは折れるんじゃないかと心底ハラハラする。何かいい手はないもんか。