Slowdive:「Souvlaki」


イギリスのシューゲイザー/ドリームポップSlowdive、1993年2nd
以前紹介したMy Bloody Valentineとならんでシューゲイザーの代名詞的なバンド。ブラックメタルでいうところのBurzumあたりのポジション?いかにもシューゲイザーらしい音をしている。


透明感のある美しいサウンドで柔らかくドリーミーなメロディをゆったり紡ぎだす幻想的なポップロック。
MBVにあった一種カオティックとも言えるような衝動的なディストーションギター・ノイズの氾濫は(#6など一部では聞かれるものの)あまりない。たゆたうように紡ぎだされる美しく儚いメロディは耽美的というよりどこまでも甘美であり、かつどこか切なく懐かしい。極上の天上界サウンドに酔いしれてしまう。


轟音美メロという感じとはちょっと違うが、深くリバーブのかけられたギターが幾重にも分厚く重ねられ、圧倒的な残響音が鳴り響く中、輪郭のはっきりしない幻想的なフレーズが波のように押し寄せてくるこの感覚はハマると癖になる


ヴォーカルはムニャムニャした中性的な男声妖艶で神秘的な女声の二軸。どちらもエコーのかかったウィスパーボイスというか、Alcestで聞けたような哀愁を帯びた浮遊感のあるフワフワボイスであり、非常に柔らかい聴き心地。それら二つの美声が時に優しく、時に切なく絡み合うようにして生まれる至上のハーモニーはもう筆舌に尽くしがたい


また今作では音楽界の巨匠にしてアンビエントミュージックの生みの親でもあるBrian Enoなる人物がゲストとして参加しており、#12#14は打ち込みアンビエント曲となっている。


透明感あふれる淡い色彩が魅了するオルタナティブロックの大傑作、大名盤。
スタイルが違うので単純には比べられないけど、俺はMVBよりこっちの方が好きかな。MBVはその耽美なメロディとは裏腹に毒々しさが感じられたのに対し、このSlowdiveそういったものを極力排した彼我の音楽を完成させている。これぞまさに癒しのシューゲイズ。
ゆるやかに流れる音楽によって得られる高揚感・没入感は、普段アトモスフェリック/アンビエントブラックメタルを好んで聴いてるような人にとっては思わぬ収穫になるんじゃないかと思う。とくにAlcestを気に入ったブラックメタラーさんは絶対ハマると思う。
シューゲイザーへの足掛かりとして推薦したい一枚。


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