Absurd:「Facta Loquuntur」


ブラックメタル国家社会主義を結び付けた最初のバンドとして有名な、ドイツの元祖NSブラックメタルAbsurdの1996年1st。の2006年再発盤。ボートラ3曲入りデジパック
ブラックメタルはその出自からしからしてすでに民族主義ペイガニズムなどの思想を持ち合わせていたたわけだけど、ナショナルソーシャリズムという一種政治的でもあるステートメントをはっきりと打ち出したのはおそらくこのバンドが初。ということらしい。


肝心の音はというと、Vlad Tepesのようなギャリギャリ・ベコベコの音質で、Transilvanian Hunger的にメロウなトレモロパンク的爽やかさ・明るさを持ったメロディがジャンジャカ掻き鳴らされる中、濁声/クリーンボイスが朗々と愛国精神を歌い上げるポンコツ・プリミティブ・ブラックメタル。極めて劣悪な音質とRawな演奏が醸し出すチープな危うさはUGマニアには堪らないはずだ。


ドッタンドドタンと単調なミッドテンポの曲を中心に時々ツタツタ疾走をかましてくる。
憂いを帯びたメロウなリフも聞けるがわりとメロディが明るめで、ズンズン重たいリフにも妙なポップさが感じられる。#12など曲によっては青空パンク丸出しになったりもし、純粋にブラックとは言えない雰囲気だ。
薄っぺらな音質だがビコビコ響く硬いベースも良く聞こえる。ドラムはやっぱり籠り気味なうえに軽い。だがそこがいい。


ボーカルはハードコアとプリブラの中間のような濁声ガナリクリーンボイスを曲によって使い分けている。濁声の方は怒号とも言うべき衝動的な感情が感じられなかなかかっこいい。またクリーンボイスの方は時に憂いを帯びつつ朗々と時に情熱的に歌っており、これがなかなかどうして泣かせる歌メロをしている#5なんかはチリチリのギターをバックに普通のバラードを歌ってる感じだ。
よく中国語っぽいとか言われてるのを目にするが、たしかに#7なんかはジャッキー・チェンの映画のEDのようにも聴こえるが、Glittertindの方が中国語っぽいと思う。
時折Evilなワレワレ・ガナリ声Nuit Noirのような悲鳴絶叫なんかも聴かれる。


メロウなプリブラSkeyforgerのような歌メロの乗っかる#2、Evilボスとツタツタ疾走#6、切ないトレモロと中国語熱唱#7、ペイガンともとれる情熱的なギタメロ#11、極悪音質による恥ずかしくなるほど爽やかなパンク#12なんかがかっこいい。


うん、これはすばらしいね。
パンキッシュなノリの明るめポンコツ・プリミティブ・ブラックメタル
チリチリジャギジャギのノイジーなギターによる鈍足極悪プリブラとヤボったいクリーンヴォーカルのギャップがハマると癖になる。
個性的なことをやっているため、好き嫌いがはっきり分かれるタイプではあると思うが、パンキッシュなブラックやTransilvanian Hungerスタイルが好きな人なら楽しめると思う。UGブラックそれなりに聴ける人ならわりとすんなり受け入れられるだろう。
間違っても一般ブラックメタラーには勧められないが、個人的には結構、というかかなりツボだったりするので、酔狂なモノ好きの方にオススメ。
読めばわかると思うがまっとうなブラックやプリミティブを期待して聴くと肩透かしを食らうんでその辺はご注意を。


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