My Bloody Valentine:「Loveless」


イギリスの伝説的ポストロック/シューゲイザーバンド、My Bloody Valentineの1991年2nd。98年の日本盤。
シューゲイザーはおろかオルタナティブロックの重要バンドのひとつ。現在のギターロックに多大な影響を与え、ノイズ/エレクトロニカ方面でも評価されているそうな。
そんな彼らの、三年の歳月と所属レーベルが倒産寸前に陥るほどの製作費をかけて作られたという伝説も残るこのアルバム、ことシューゲイザーにおいては、ブラックメタルにおけるMayhem1stくらい崇拝されている。シューゲイザーというスタイルを確立した偉大なバンド、およびアルバムということだ。


その中身はというと、まさしく轟音美メロというのにふさわしい、渾沌と氾濫するギターノイズの波のなかにとろけるような甘美なメロディがフワリフワリと浮遊する浮世離れした音世界が提示されている。
もう20年近く前に収録されたものではあるが、古臭さは一切感じられず、芸術的とすら表現できるほどに完成されつくしている


いや、ゴリゴリのブラックメタルに比べたら轟音の基準が違うってのは言うまでもないんだけどさ(笑)
歪んだギャリギャリボコボコギターがバックで掻き鳴らされる中、さまざまな音色が厚く重ねられ幻想的な聴き心地のするギターが奏でる甘々ポップでどこか懐かしいメロディが果てしなく脳内シナプスを興奮させ、底知れない快楽に溺れてしまう
またLiv嬢を彷彿とさせる女性ヴォーカルの妖艶なウィスパーボイス、そしてそれに負けず劣らず艶のある中世的男性ヴォーカルが楽曲に漂う浮遊感をさらに地に足のつかないものとしている


特に突出してキャッチ―な甘アマナンバー#5#6あたりはあまりにも浮世離れした楽園サウンドなため、逆に頽廃的というか、かえってこれを聴き続けていたら精神が荒廃してしまいそうなほど
また効果音やシンセサイザーなどエレクトロニカアンビエント的アプローチも積極的に用いられており、卒業式ムードの金八チューン#8青空ドライビングナンバー#10など、一見単調になりそうでありながらわりといろいろな顔色の曲が堪能できる。
そしてなによりシューゲイザーきっての名曲と名高い#11:Soonの圧倒的な存在感。
ほんと、完璧に作り込まれた楽曲群には脱帽してしまう。さらに曲純も絶妙でジワジワ確実にトリップできる。


どこまでも幻想的で耽美なゆったりサイケロック。
上でも書いたけど、これだけメロディアスで表面的には癒しに満ちた音でありながら、その快楽ゆえに人間を堕落に導いいてしまうような怖さがチラリと、しかし確かに感じられる。
アルバムタイトルの示すとおり、表現されているものは「愛のない」世界なのだろう
そーゆー意味で文字通りドラッグのような中毒性がある。いや、ドラッグやったことないけど、なんとなく(笑)
うーん、これはいいね。部屋一杯の大音量で聴いたら幽体離脱でもしようかっつーくらいリラックスできる。
オルタナロックぅ?と白い目で見ることなく聞いてみてもらいたい。
シューゲイザー最高。


・MySpaceその1#5:When You Sleepおススメ。
・MySpaceその2#6:I Only Saidおススメ。
彼らはこのアルバムを出して以来活動を休止している。あまりにも完成されたものを作ってしまってもうやり残したことがないんだろう。まさにMayhem(今のMayhemは個人的に1stの頃とは同名異バンドという認識)。